アレルギー徒然日記 「腫れ」時々「アニサキス」

アニサキスアレルギー、慢性蕁麻疹(血管性浮腫)、喘息を同時発症しました。他の患者さんの参考になれば幸いです。

発症後初の海外旅行④牛乳事件、翻訳アプリでアレルギー対応、チャム博物館

前回に引き続き、食物アレルギー・喘息発症後の初の海外旅行の続編です。

目次

1. 牛乳事件

ミーソン遺跡を見学後、ホイアンのホテルに帰着。 暑い中観光したため、喉が渇き、スーパーで購入した冷たい牛乳450mlを一気飲みした所、事件発生。

 

飲んでから約40分後、急に下腹が痛くなり、トイレへ。その後、2時間程、トイレから出られませんでした。冷や汗でびっしょりになりながら、ひたすら嘔吐と下痢を繰り返した。全て排出されると、腹痛も治まったが、へとへとに。だるさと熱っぽさの中、取り合えず部屋で様子を見る。

 

症状が続くようであれば、海外旅行保険で使える近隣のクリニックに行かないとだめだな思っていました。幸い症状は治まり、かゆみや腫れ、呼吸苦もなし、いつものアレルギー反応ではなさそう。翌日昼頃まで、ホテルでゆっくりすることに。

 

私は生乳100%以外の低脂肪乳やチーズを食べると、下痢、腹痛、かゆみが出ます。なので、通常は生乳100%の牛乳・低脂肪乳のみ、毎朝100cc位を加熱して飲んでおり、チーズも除去しています。

 

購入した牛乳は生乳100%、ベトナム中部のナショナルブランドなのですが、暑さで悪くなっていたのか、他の原因があったのか、ひどい消化器症状が出ました。

 

その時は「生乳100%にもアレルギーが突然出た? たくさん飲んだから? 加熱してなかったから?」と、反射的に思ってしまいました。順調だった旅行に、ちょっと「アレルギーの暗雲立ち込める」感じ。

 

他の食アレ患者さんも、お腹や皮膚の症状が出ると、「あれ、アレルギーきた?」と、ひやっとされることがあるのでは?と思います。私の場合、リラックスしていても、心の奥底では、「いつまた、突然アレルギーがやってくるかもしれない」と、臨戦態勢で構えている。

 

結局、体調は大丈夫そうで、予定通り、翌日昼頃にホイアンを出発し、車でダナンに戻りました。

 

2. 翻訳アプリでアレルギー対応

ダナンに戻った後も、体調が本調子でなく、調理する体力がありませんでした。そこで、ホテルの目の前にあるビーガンレストランを試してみることに。ホテル選びの際、もしもの時はこのレストランで外食できるかも、と考えホテルを選んでいました。

 

行ってみると、家族経営でほのぼのした感じ。現地の人や欧米人でテーブルは既に満席。お店の子供が注文・配膳担当。

 

ベトナム語の翻訳アプリを使い、アレルギーなので、塩・食物油以外の調味料なしで、野菜を食べたいと伝えました。

 

すると、厨房の家族に伝えてくれて、また翻訳アプリで、返答してくれました。何度も往復してくれて、「アレルギーで食べれないんだ、わかった!」と理解してくれました。「メニューにないけど、こういうメニューなら作れる」と、安全なメニューを提案してくれました。

 

家族用の通常のメニューも頼むと、「それは調味料がいろいろ入っているから危ない。大丈夫?」と心配してくれました。

 

私が「家族が食べるから大丈夫、私は食べない」と伝えると、「OK、よかった!」という感じ。

 

本当にいい子たちで、感動しました。結局、私は青梗菜、ナス、白米、空心菜等を頼んで、安全に食べることができました。

美しい青梗菜の蒸し炒め

家族が頼んだブンという米の麺

お会計の際、翻訳に奔走してくれた子供たちに、すこし多めにチップをあげました(ベトナムでは、欧米と違いチップは必須ではない)。

 

アレルギーを気遣ってくれた、子供たちの優しさに心も満たされ、幸せな気持ちでホテルの部屋に戻りました。アレルギーにならなければ、こういうベトナムの子供達の親切さに触れることもなかった。旅のよい思い出になりました。翻訳アプリも、外食のアレルギー対応に大活躍でした。

 

3. チャム彫刻博物館

翌日、体調も大丈夫そうなので、ダナンの中心にある、チャム彫刻博物館に行きました。この博物館は、かなりお勧めです。是非、十分な時間を取って行ってみて下さい。

 

  • 1902年に、フランス国立極東学院(EFEO)の考古学者だったアンリ・パルマンティエによって博物館の設立が提案された。
  • 1915年に建設、1919年に正式開館。100年以上の歴史がある。
  • チャンパ王国の彫刻・遺物が保管。多くがミーソン遺跡からの発掘物。ベトナム戦争時のアメリカによる爆撃を逃れた。
  • チャム族の人口は17.8万人(2020)。ベトナムの全人口(2023)が1億30万人で、その86%がキン族が占める中、チャム族は約0.2%と少数民族。その歴史や生活を知ることができる。

状態のよい古い遺物が、所狭しと展示されています。爆撃を逃れて、本当によかった! フランスの文化財に対する熱意は本当にえらい!

石で、この滑らかな曲線を出せるのはすごい技術

 

4. ちょっと波乱があった帰国

牛乳事件以外は何も起こらず、アレルギーや喘息の症状も出ず、無事に帰国の途へ。あ~、よかった!

 

ダナンは台湾や韓国の人に大人気の観光地です。なので、日本発着便より、台湾や韓国経由の方が、便数も多く便利。行きは、大韓航空でソウルインチョン経由。帰りはTiger Airで台湾桃園経由でした。

 

帰りの最初の便(ダナンー>台北)が1時間以上遅れた。乗り継ぎ便(台北ー>羽田)に間に合わければ、台北に数日宿泊になるかもという状況。お盆の時期で混んでおり、台北ー>羽田便の予約の取り直しが難しそう。休み明け直ぐに仕事の予定が入っている家族は、「運賃が高かろうが、何としても日本に帰る!」と言っている、まずい。

 

桃園空港到着後、猛ダッシュ。幸い、何とか乗継便に間に合い、羽田行に乗れました。

乗継便のすぐ後ろの席で、日本人の若い女性がずっと咳をしていました(マスクなし)。喘息・血管性浮腫持ちの私としては、風邪やインフル等で喉が腫れたり咳が出ると、症状がすごく悪化してしまうので、少し怖いなと思いながら、マスクをしていました。家族は、猛ダッシュ後安心し、マスクなしで寝てしまった。

 

そこで感染したか分かりませんが、家族は帰国後3日目に発熱、病院でインフルA型陽性が判明、自宅で部屋に隔離。私も少し症状が出ましたが、検査では陰性、軽く済みました。牛乳事件の影響で、お腹は1週間ぐらい調子が悪かったのですが、それも治りました。

 

5. 振り返り・感想

ひやひや、どきどきの、発症後初の海外旅行の感想です。

a. 食料調達・調理の時間とエネルギーを温存

発症前のように、長時間びっしり観光のスケジュールを入れるのは無理。

 

食料調達や調理には、時間もエネルギーも結構かかる。海外だと思うように食料調達できず、複数のお店に行く可能性もある。観光だけで疲れ切らないよう、時間とエネルギーを温存する必要がある。

 

今回は、発症前に比べ50%位の観光の予定しか入れませんでした。本当は、孫悟空が閉じ込められたという五行山や、近郊のフエという世界遺産も行きたかったのですが、無理しませんでした。余裕のあるスケジュールで、想定外の事が起こっても対応できて、よかったです。

b. 食事関係の事前調査が重要

スーパーや、食べられそうなレストランの場所を事前に調べておくのは重要だと思いました。ホテル選びの際、観光に便利な場所より、食事の調達がしやすい場所の方がより便利と感じました。

c. 食の多様性に慣れている都市だと楽

ダナン・ホイアンについては、レストランでアレルギー対応してもらいやすく、東京より外食しやすい環境だと思いました。旅行をする際は、食の多様性に慣れていて、ビーガンレストランなどが多い都市を選べば、旅行とアレルギーを両立しやすいな、と思いました。

 

8日間でしたが、発症前と全く違った視点で、違ったスタイルの旅で、いろいろな経験ができました。 

 

ミーソン遺跡やチャム彫刻美術館でシヴァ神(再生、破壊の神)を見て、自分のアレルギーや免疫のことを考えさせられた。何が原因か分からないけど、シヴァ神の怒りをかい、突然、体内の免疫システムが破壊され、アナフィラキシーが起こって炎上、みたいに感じる。普通の食事ができなくなった私の体も、破壊の後には、再生があるのだろうか。

 

ミーソン遺跡が、様々な困難を乗り越えて、今平和な状態にあるのを見て、私の体もそんな風になってくれるといいなと思った。

 

また旅をしたいと思います。アレルギー持ちになっての初の海外旅、ちょっと新しい人間になって旅したような新鮮さを感じました。

同じブログをnoteで先行発信しています。

 

発症後初の海外旅行③ ホイアン、ミーソン遺跡

前回に続き、食物アレルギー・喘息発症後の初の海外旅行の続編です。

目次

 

1. ホイアンへ移動

ダナンで2泊後、車で約40分のホイアンに移動。ホイアンは日本との関係が深い都市です。古くは朱印船貿易時代に遡り、2009年には現在の天皇も訪問しています。

ホイアン旧市街は1999年にユネスコ世界遺産に指定され、大規模開発ができません。そのため宿泊は、小規模ホテルやホームステイと言われるペンション・民宿が中心です。なので、キッチン付き宿は見つけられず、普通のホテルを2泊予約。

 

2. ホイアンでの食事

キッチンがないので、食事はこんな感じで考えていました。

  • 炭水化物:ダナンで購入したフランスパン、日本から持参のオートミール・レトルトご飯
  • 野菜・乳製品等:現地で調達
  • 宿の朝食:事前に問い合わせた所、野菜・果物・ビーガンメニューもあるとのことで、食べられる物もありそう

ホイアン到着後、少し街を歩いてみると、コンビニには生鮮食品がおいていなく、大きなスーパーもなし。市場にも行ってみましたが、衛生面がちょっと心配。結局、レストランで野菜を食べれないか、探すことになりました。

あるレストランで、蒸し野菜と白米を注文。炒めた料理はコンタミが心配なので、蒸し野菜の方がより安全かなと。アレルギーなので、他の食材や調味料が混ざることがないよう、若い店員さんに英語でお願いしました。

最初、家族に試食してもらい、何の調味料も使われていないことを確認し、私も食べることができました。

おしゃれな食事ではありませんが、家族と一緒に旅行に来て、同じテーブルで外食ができた事が、幸せだな〜、と感じました。

 

食事の幸せって「食物」自体だけではないんですよね。食物がシンプルだと、食物の刺激で脳がいっぱいにならない。脳のCPUに空きができ、気づかなかったものに気づく機会が増える気がします。

 

ダナン・ホイアンとも欧米の観光客が多く、多様な食のニーズに慣れていていると感じました。ビーガンレストランも東京以上にたくさんある。通常のレストランでもビーガンメニューがある所が多く、顧客に合うようにアレンジもしてくれる。食アレ患者さんフレンドリーな環境だなと思いました。

 

逆に、海外から日本への旅行者・長期滞在者で、様々な事情で食事制限がある人は、食事が大変なのでは?と思いました。

 

都市部でもビーガンレストランの数はまだ少ない。お店の人と英語でコミュニケーションを取ったり、個別対応が難しい場合も多い。インバウンドや国際化推進を目指すなら、食の多様化への対応が課題のように思います。東京よりも、ダナンやホイアンの方が10年単位で進んでいる。

 

ホテルの朝食ですが、サラダや果物もあり、食べる事ができました。ベトナムでは、朝食に麺を選べる事も多く、家族は毎日違った麺を楽しみました。カオラオというホイアン名物の麺は、日本の伊勢うどんが起源という説があります。

 

ベトナムは米の麺が多いので、小麦、グルテン、卵アレルギーの方でも食べられる麺が多いと思います。

 

3. 灯篭(ランタン)に癒された

ホイアンのメインの観光時間帯は、灯篭が灯る夕方以降。狭い旧市街に、ダナンや近郊のビーチリゾートからも観光客が日帰りで押し寄せ、すごい人。

 

早めの時間が人が少なくお勧め

お盆の時期と灯篭が重なり、この世とあの世の中間のような、幻想的な不思議な感じでした。

灯りを見ながら、アレルギーで大変だった記憶が、灯篭の中にカプセルのように込められて、川に流れていくような感じがしました。

大変だったけど、よく粘って頑張ったなと思いました。そして、一緒に戦ってくれた家族に感謝です。日常を離れ、感情や思考の整理を助けてくれる旅。発症後、足がすくんでいたけど、やっぱり旅はいいな。

アレルギーのCofactor(憎悪させる原因)として医師の患者向け資料にいつも書かれている「旅行」。うまくリスクを管理できれば、アレルギーと両立できるのではと思いました。

 

4. ミーソン遺跡

翌朝は、ホイアンから車で約70分、ミーソン遺跡へ。

四方を山で囲まれた、チャム族のチャンパ王国(2-14世紀)の聖地。4世紀頃、トゥボン川流域に複数の都市が築かれ、チャキウは政治、ホイアンは経済、ミーソンは宗教の中心地として栄えた。

中国の影響が強かったベトナムで、インドの影響(ヒンドゥー教、サンスクリット)が見られる貴重な文化遺産。遺跡でカンボジアのアンコールワット(クメール王国)は有名ですが、ミーソンの方が、実は歴史はずっと古い。クメール王国とチャンパ王国は昔からライバル、戦っていました。

14世紀に北部のベトナムに併合され、チャンパ王国は滅亡。末裔が、今も南西部の山間部にいるそうです。

1885年、フランス統治下で、フランス人により遺跡発見。1969年頃、ベトナム戦争でアメリカ軍のB52の爆撃によって大部分が破壊。その後、文化的価値が認められ、1999年にユネスコ世界遺産登録。現在は、7世紀後半~13世紀後半までの遺跡が残っている。

ミーソン遺跡の建物は、接着剤を使わずにレンガを少しずつずらして積み上げる独自の建築技法。サンスクリット語と古チャム語で書かれた石碑もたくさんありました。まだ解読されていない物も多いそうです。

こんな山奥まで、ジャングルをかき分け、レンガや資材を運んだり、多数の人が建造に携わるのは、大変な事だったと思います。現在でも、ミーソンまで行くのは結構大変。片道通行の橋を超え、幾つも小さな町を超えて、やっとたどり着ける、緑豊かな聖地。

ヒンドゥー教つながりで、インドの支援で再興が進んでいる遺跡群もありました。ベトナムにおける、インドと中国のせめぎ合いは、今に始まったことではなく、歴史的にずっと存在していた事を知りました。

 

ベトナムは、戦いがずっと続いて大変だなと思いました。民族同士の争い、植民地化、独立、ベトナム戦争、そして今も中国とインドの狭間。

 

でも、別な視点から見ると、破壊により新生が進み、日本より進んでいたり、効率的なやり方が定着していたりする。現地の子供たちは英語で話しかけてくるし、タクシー・シェアライドも、とても効率的。食も多様なニーズに対応できる。

 

昔からのベトナムのやり方・国民性・生活と、新しい物がまだらに存在しながら進化している所が、興味深いと思いました。

 

復元された、新旧のレンガが入り混じる遺跡がまさに、今のベトナムの象徴に思えます。

 

ふと、自分のアレルギーのことが頭をよぎった。私の体の中で、免疫に色々な変化が起こっているのは、破壊と進化の過程なのだろうか。

 

自分の免疫システムに攻撃されるなら、これを機に進化できる生物、人間でありたい。生物として、バージョンアップの時期にいるのかもしれない。

 

ベトナムに来て遺跡を見て、そんな事を思いました。
旅の続きは、こちらです!

kozakura5.hatenablog.com

 

同じブログをnoteで先行発信しています。

成人アレルギーの診断が難しい理由

成人アレルギー(喘息・食物)は、どんな風に発症するのか、あまり情報がないんですよね。以前のブログで発症時のことを書いたのですが、今日はもう少し詳しく書きたいと思います。 そして、成人のアレルギー診断が難しい理由を、一人の患者の視点から考えてみたいと思います。

 

目次

 

1. アレルギーとは思わず循環器内科へ

 

私は発症当時、アレルギー(喘息・食物)という認識は全くありませんでした。最初の自覚症状は、血圧上昇(上が140以上)、動悸と頻脈(100)。循環器の症状だったので、検査もできる、近隣の中規模の病院の循環器内科を受診しました。

 

心電図、血液検査、心エコー検査をして、問題なし。直前に膀胱炎・腎盂腎炎のような症状が続いたので、自律神経が乱れて血圧が上がっているのでしょうという診断、アーチストという血圧を下げる薬を処方されました(喘息に禁忌のお薬でした)。

 

薬を飲み始めて2週間後、夜中に呼吸が苦しくなり、とても寝ていられない、ヒューヒュー音も出た。

 

上体を起こして、朝まで何とか耐えて、朝一番で予約なしで再診。2時間半待って3分の診察。「自律神経で血圧乱れるのはよく分かんないんだよね。薬変えておきます」。新しいお薬45日分が出て終了。

 

2. 最初の大学病院での医師とのやり取り

 

変更された高血圧の薬を飲んだら、血圧が下がり過ぎ(上が70-80台)、ふらふらで更に具合が悪くなった。呼吸困難で眠れない日も週に3-4日継続。

 

大きな病院で、循環器でない可能性も診てもらえる所に行かないとだめだと思い、近くの大学病院の総合内科を受診することに。

 

受診後、血圧の薬は中止に。発症から1ヶ月後のこの頃から、アレルギーやアナフィラキシーの症状が全部揃って出てきました。

 

  • 循環器∶血圧上昇(上が140、最初の2ヶ月のみ)、血圧低下(上が70-80、夜間)、頻脈
  • 呼吸器∶SpO2低下、夜間起座呼吸、ヒューヒュー音、3分歩いたら息苦しくなって座り込む
  • 消化器∶腹痛、膨満感、下痢、体重減少(半年で12kg)
  • 皮膚粘膜∶顔・舌・喉・手の腫れと紅潮、飲み込みにくい、むせる、声がれ、舌大きくなり歯に当たり痛い

一般的な皮膚表面にボツボツできる蕁麻疹は、発症後3ヶ月目に少し出始めました。私の場合、皮膚の深い部分や粘膜が腫れる、血管性浮腫の方がより強い症状でした。舌から腸まで腫れている、という感じ。

 

目も、中から押されるような頭痛を感じた翌朝にバーンと腫れ、瞼も動かず視野も欠け、外出できない事がよく起こるようになりました。

 

手の腫れはほぼ毎日、赤い水風船のよう。結婚指輪や時計も1年間つけられませんでした。足指の腫れは発症から5ヶ月後に遅れて始まりました。

 

顔や手足が腫れる直前には、皮膚表面がチクチクする感じ、鼻先や耳奥がムズムズする感じがありました。

 

これだけのアレルギー症状が揃っていて、医師には全部伝えましたが、診断できなかったんですよね。

 

話は戻ります。最初の大学病院では8ヶ月通院。総合内科では全く診断がつかず。自分でアレルギーや血管性浮腫を疑い、皮膚科に紹介を依頼。皮膚科で、特発性血管性浮腫の診断。アニサキスアレルギーと喘息は、他の大学病院に転院するまで8か月間、診断がつきませんでした。その時の医師とのやり取りです。

  • 「頻脈・動悸・血圧不安定なのは、自律神経失調症なのでは?」
  • 「ストレスで胃腸が弱っているのでは?」
  • 「腹痛やお腹が腫れるのは、便秘なんじゃない?」
  • 「赤く腫れたり、手足がむくんだり、動悸・頻脈は、更年期じゃないの?」
  • 「病院で測ったSpO2は問題ないので、呼吸器内科には紹介できません」
  • 「食物アレルギーの場合、食べてすぐ症状が出ます。時間がたって症状が出ているので、食物アレルギーではない」
  • 「アニサキスの血液検査もしたけれど、擬陽性でアレルギーではないです。他も全部陰性なので、食事は心配せず食べていいですよ」
  • 「特発性の慢性蕁麻疹です。慢性蕁麻疹の70%が原因不明で分からない事が多い」
  • 「夜間の起坐呼吸は、冠攣縮性狭心症が原因かもしれない。ニトログリセリン出すので、発作時に試しに飲んでみて」

呼吸は苦しくて眠れない、SpO2は週2-3回は95%以下、お腹は痛くて下痢、舌も喉も目も腫れている。その状態で、8か月このやり取りを続けるのは、本当に拷問のようでつらかったです。

 

4. 呼吸器内科クリニック受診も、診断つかず

 

大学病院の総合内科初診から6週間経った頃、何の診断にも繋がらないので、自分で調べ喘息を疑い、近くの呼吸器内科クリニックも受診。

 

呼気NO検査で22ppb、喘息かどうかグレーゾーンだけど、取り合えずレルベア(喘息用長期管理吸入薬)試してということで、吸入開始。

 

再診時、呼吸器の症状(呼吸苦・SpO2低下)と皮膚粘膜症状(顔・手・喉・舌の腫れ・紅潮)がいつも同時に起こる事を伝えました。喘息なら、どうして皮膚粘膜症状が出るのか聞きました。分からないとのことで、更年期用の漢方薬が追加されました。

 

次の再診時、症状が悪化している事を伝えると、喘息ではないかも、大学病院で診てもらってということで終了に。

 

その先生も、中規模の病院の呼吸器内科でトップをされた後に開業され、地元の医師向けに喘息のセミナー等をされている、呼吸器専門医・総合内科指導医の先生でした(アレルギー専門医ではない)。それでも、成人の喘息や食物関連アレルギーの診断は難しかった訳です。

 

念の為、婦人科で更年期かどうかホルモン検査もしてもらい、全く問題なし。腫れも更年期の出方と全然違うのにね、と言われました。 中年女性の不調と言えば、何でもまず更年期が疑われる。合計3名の男性の医師に更年期を疑われました。

 

大学病院でも、中年女性の更年期に多い、冠攣縮狭心症は疑われても、喘息や食物アレルギーは疑われませんでした。喘息の方が発症率は高いのに。

 

更年期とアレルギー疾患の鑑別方法も明確にした方がいいと思います。診断がつかない不調を、すぐに更年期と片付けられてしまう。診断・治療が遅れ、患者は不調が続き、つらい思いをします。

 

成人の食物アレルギーは、日本でもアメリカでも、女性の方が発症率も高そうなので、注意が必要だと思います。

 

4. 振り返り

 

循環器内科で最初に処方された、アーチストという薬。後で調べたら、喘息の人には「禁忌」の薬でした。その薬によって、呼吸困難が悪化した可能性があるのかなと、推測します。

 

この循環器内科の再診時や、大学病院の総合内科で、喘息やアレルギーの可能性が疑われて、呼吸器内科やアレルギーを診る診療科に院内紹介してもらっていたら、長期間苦しまなかったと思います。

 

特に大学病院の救急兼務の総合内科で、喘息も食物アレルギーも鑑別にあがらないというのは、かなり問題だと思いました。救急でアレルギーが診断できないのは、命に関わる。

 

私の場合は、喘息、食物・食物関連アレルギー、血管性浮腫が併発したので、少し厄介なケースだったかもしれません。

 

ただ、素人の私でも、日本内科学会の呼吸困難の日本の起こる疾患のリストや、日本アレルギー学会のアナフィラキシーガイドラインを読んで、「喘息、食物アレルギーによるアナフィラキシー、血管性浮腫の可能性があるのでは?」と自分で疑うことはできました。

 

ガイドライン通り素直に進めば、正しい診断に至る可能性が高い。すごく難しい病気ではないのに、なぜ一般の医師の鑑別にあがってこないだろう。

 

結局、二次救急の中規模の病院、大学病院、呼吸器クリニックの合計6名の医師が、診断がつかなかった。

 

循環器、呼吸器、総合内科・救急、皮膚科、どの科でもだめだった。何度も診断に繋がる機会があったのに。

 

ということは、特定の医師個人の診断能力や技術の問題ではないと思います。

 

5. 診断できない理由

なぜ、成人のアレルギー診断が難しいのか、自分なりに原因を考えてみました。

a. 非特異的症状、成人の鑑別疾患の幅が広い

アレルギーで出る症状が、他の病気でも起こり得る。その上、中年期の成人は、鑑別しなければいけない病気の範囲も広くなる。患者本人・患者の家族・医師も、アレルギーを最初に疑う可能性が、小児より低くなるのでは?と推測します。

小児の場合、蕁麻疹・下痢・呼吸困難の症状が出て小児科に行けば、アレルギーを疑われる可能性が高いと思います。私が疑われた更年期、心不全による起座呼吸、冠攣縮狭心症は最初に疑われないですよね。

成人の場合、蕁麻疹が出てなければ、アレルギーを疑われないことが多いのでは? そして、その診療科でよく診る病気(例 循環器だったら高血圧、心不全、狭心症等)が、まず候補に挙がってくる。検査で異常がなかった場合、アレルギーが次の候補としてあがらず、「ストレスでしょう」「更年期でしょう」となり、診断がつかないという事もあるのかな、と推測します。

 

いきなり更年期や不定愁訴等に診断が飛んでしまう前に、アレルギーや他の鑑別疾患が検討されるステップが入るといいですよね。そのもう一歩に繋がる為には、何が必要なんだろう? 

 

例えば、私のような中年期の女性が、血圧上昇・頻脈・呼吸苦等で、循環器・呼吸器内科を受診するのは、珍しくないと思います。

 

循環器・呼吸器の病気の検査が終われば、自分の専門範囲の診断は終わった、という感じなのでしょうか? 

 

症状から原因や病気を絞り込むというより、その診療科で頻度の高い病気の検査を一通りやって、異常がなければ、病気でないというプロセスのように、私は感じました。

 

アレルギーが原因で、循環器や呼吸器の症状が出て受診している場合も、その診療科の診療範囲内という意識は、そもそもないかも、と感じました。だから、アレルギーが鑑別候補として挙がってこないのでは?

 

アレルギーが疑わしい患者さんを、正しくスクリーニングして、専門医に紹介するステップまでが、最初に診察した非専門医の役割と意識付けられたらいいのでは?と思います。

 

「こんな症状の、隠れ成人アレルギー患者さんに要注意」キャンペーンをやったら良さそう。

 

成人がよく受診する診療科の学会と連携して、成人アレルギーの診断見逃しを防ぐための、注意喚起が必要かもしれません(希少疾患で診断がつかない時に行うのと、同じようなアプローチ)。

 

せめて喘息については、呼吸器内科でなく一般の医師であっても、症状からを喘息を疑える状態であって欲しい。

 

b. 幅広い診療科での非専門医の診察

成人の場合、幅広い診療科で非専門医が最初の受診窓口の可能性が高いと、正しく診断できなくても、仕方ない部分もあると思います。でも、アレルギーの専門性を補完する方法はあると思います。

 

大きな病院なら、他の診療科にアレルギー専門医がいる場合も多い。原因不明、診断がつかない場合、院内紹介でそのアレルギー専門医のアドバイスを受けたりという事は、できないのかなと思います。

 

会社の環境であれば、難しい問題で行き詰まったら、他の部署にもお願いして、アドバイスしてもらう。問題が起こっているのに、いきなり異常なし、終わり、とはならない。各自が自分の専門性を提供し、助け合って一緒に問題を解決する。医師の世界は違うのでしょうか。

 

例えば、私が最初に行った大学病院には、総合内科と皮膚科にはアレルギー専門医はいなかったけれども、呼吸器内科・耳鼻科・小児科には専門医がいました。院内紹介で連携すれば、早期にアレルギーの診断がついたのでは?と思います。

 

私の場合、呼吸器内科に何度も紹介を頼みましたが、断られました。皮膚科で呼吸苦の診断はできない。皮膚科で特発性血管性浮腫の診断確定前に、呼吸器内科のアレルギー専門医へ院内紹介し、アレルギー専門医の知識や能力をもっと有効活用すべきだったのでは、と思いました。

 

それから、アレルギーを見逃してしまったり、誤診しても、気づかない医師も多いのでは?と推測します。

 

私の場合、診察した6名の医師の内、紹介状を書いてくれた最後の1名以外には、喘息やアニサキスアレルギーだった事は伝わっていないと思われます。

 

何らかのフィードバッグ・ループが出来ればいいのにな、と思います。誤診を続けたい医師はいないし、アレルギーだった事が分かれば、次は気をつけますよね。

 

医師にとっては、誤診は知りたくない事実かもしれない。でも、国としてアレルギーの法律まで出来て、対策強化をしている。アレルギーの誤診が分かり、次の診断に活かしてもらう事も必要なのでは? 医療費や税金の無駄遣い削減にもなる。マイナ保険証で、そういう仕組みはできないのかな?

 

c.「食物アレルギー=小児」診断バイアス?

非専門医の間では、成人発症の食物アレルギーは発症頻度が低いと思われているのでは? 今まで出ている統計が、小児の食物アレルギーの発症頻度を強調するあまり、成人の診断にバイアスをかけてしまい、鑑別に挙がりにくくしている可能性もあるのでは? 

 

もしそうなら、医師コミュニティ内で、成人発症のアレルギーについて、もっと注意喚起してもらう必要があるかもしれません。

 

d. 活動範囲が広く、原因を絞り込みにくい

アレルギーが疑われても、成人は活動範囲が広く、アレルギーの原因探索の範囲も幅広い可能性もある。仕事・趣味・食生活・住環境等、高度な探索技術や経験、長い問診時間が必要な事も多いと思われます。

 

制限のある診察時間内に、原因にたどり着けず、特発性・原因不明となってしまうケースも多いのかな、と推測します。

 

非専門医の視点に立てば、こういう様々な条件下で、成人の食物・食物関連アレルギー・喘息を鑑別に挙げ、正しく診断するのが難しい状況にあるのかな、と推測します。

 

6. どうすればいい?(私見)

a. アレルギーが鑑別にあがる事をまず目指す

非専門医がアレルギー疾患の可能性がある成人を診察する際、アレルギーが鑑別にあがってくる状態を、まずは目指さないといけないのではないかと思います。

 

そのためには、非専門医から「何がアレルギー疾患を疑いにくい原因になっていると思うか?」「どういう支援が必要か?」等をヒアリングやアンケートで聞いてみてはどうでしょうか?

 

また、成人アレルギーの患者さんからのアンケートで、以前に受けた他の診断名・診療科名、受診した病院数、発症から診断までの期間等のデータが集められるといいですよね。

 

b. 「診断」の品質の現状把握、必要な品質改善へ

そういった現状把握をすると、アレルギー診断という医療サービスの品質が、客観的にどういう状態か認識され、必要な改善につながりやすいと思います。

 

また、アレルギーとの鑑別が難しい病気が特定されれば、そこに焦点を当てた詳しい鑑別方法を非専門医と共有し、正診率を上げることも可能かもしれない。

 

c. 品質・業務改善の専門家も必要かも

品質の改善は、エラー・ばらつき等の現状把握、要因分析、そして根本原因に効く改善策を入れていくという基本ステップを踏めば、改善が可能。サービスの品質改善、診断学の専門家等を入れて、分析をしてみるのも一つかもしれません。

 

そして、改善策が決まり導入する際には、是非、Acceptability(受け入れやすさ)にも気を配って頂くとよいと思います。

 

改善効果(Impact)= 解決策の質(Quality)x 受け入れやすさ・実効性(Acceptability)

 

アレルギーポータルの医療従事者のページに、長いPDFをペタっと貼るだけだと、Acceptabilityが上がらず、改善効果に繋がりにくい。PDFの中身はネット検索でも、ヒットしにくいです。

 

例えば、ガイドラインよりも踏み込んだ、成人発症のアレルギーの特徴や実践的な鑑別のコツをまとめたチェックリストを作る、問診を再現したビデオを作る、ケーススタディ式のオンライン研修を実施する、Doctor-to-doctorの相談窓口を作る、他の学会とコラボで診断見逃し撲滅キャンペーンをするとか。

 

診断プログラムやAIの活用、効率的な事前問診の仕組みなど、限られた診察時間で正診率を上げるための、業務効率改善ツールも必要かもしれません。

 

成人アレルギーの最前線にいる非専門医にも、武器になる実践的な知識やツールを提供し、興味を持って積極的に学んでもらいながら、全体の診断の質を上げていく必要があると思います。

 

d. 役割の見直し・明確化

アレルギー専門医の役割の見直しも必要かもしれません。海外のように、難しいケースの診断、急性期の治療は専門医が担当。その後は、非専門医のかかりつけ医に逆紹介し、専門医がいつでも相談に乗れる形で後方支援する等。専門医の限られた時間を、より緊急性やリスクの高いものに集中させる必要もあるかもしれません。

 

拠点病院で成人食物アレルギーの診察予約が4ヶ月先まで取れないといった問題も解決する必要があると思います。

 

海外で行われているように、アナフィラキシーや喘息発作を併発していないか等、予約時に看護師さんが確認するようなトリアージも必要かもしれません。また、一般の企業で普通に行われている、業務改善やオペレーショナルマネージメントの専門家を入れての、客観的な業務の見直しが必要かもしれません。

 

非専門医の役割についても同様に、今後のアレルギー医療の中でどういう役割を果たしてもらいたいのか、もう少し明確化する必要があるかもしれません。

 

最初の受診窓口で、アレルギーの可能性が疑わしいケースを正しく鑑別でき、必要に応じて専門医に繋ぐ役割を、しっかりと担ってもらうのが、まず大切なのでは、と思います。

 

その役割を担ってもらう為に、必要な支援は何か、非専門医の現場の困りごとは何か等、非専門医の視点も積極的に取り入れる事も、大切かもしれません。

 

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日本のアレルギー疾患アンケート調査

今日は、アレルギーポータルに掲載されていた、2022年度アレルギー疾患に関するアンケート調査について書きます。

目次

 

1. アレルギーポータルで発見


先週、久しぶりにアレルギーポータルに行ってみました。このサイトは、アレルギー疾患対策法等を受け、国民がアレルギーに関する情報にアクセスできるよう作られたものです。厚労省が補助し、日本アレルギー学会が運営しています。

 

allergyportal.jp

 

そこで「2022年度アレルギーに疾患に関するアンケート調査」の調査結果を発見、見てみました。

 

2. 調査について

  • 厚生労働行政推進調査事業「アレルギー疾患の多様性、生活実態を把握するための疫学研究班」による調査

  • 目的:全年齢層におけるアレルギー有病率と個々の合併率を明らかにし、アレルギー疾患の現状を把握すること

  • 実施時期:2023/1/6-2/18 ウェブで実施

  • 対象者:7都道府県 77病院のアレルギー疾患医療拠点病院の職員とその家族、24,444人

  • 調査内容:様々なアレルギーの有病率、アナフィラキシー既往率

  • 質問形式(食物アレルギー)

    • これまでに医師から食物アレルギーと診断されたことはありますか。

    • 今現在、除去している食品は何ですか。また、どのような症状ですか。

    • 「診断されていないがそう思う食品」は何ですか。除去している理由は何ですか。

    • 今現在は食べられるが、除去していた食品は何ですか。

 

3. 食物アレルギーの調査結果

  • 全年齢の既往を含む有病率は約16%。その内、
    • 診断され寛解しているが、約5%
    • 診断はないがそう思うが、約7%
    • 診断されているが、約4-5%
  • 幅広い年齢層に分布。小児だけでなく、成人にも多く見られた。
  • 女性は20-24歳、男性は15-19歳がピーク。その後緩やかに下降傾向。アメリカの世代ごとの有病率の変化の傾向と似ている。
  • 成人は、女性の有病率が男性より高い。これも、アメリカの有病率と同じ傾向。
  • 原因物質:全年齢の1-5位は、キウイ、エビ、メロン、カニ、モモ。「診断されていないが、そう思う」人の割合が、半数以上だった。
  • アナフィラキシー(医師に診断されている): 全体で1.8%。小児期は男性、成人は女性に多かった。 原因(全年齢)は、1位が食品(60%)、2位が薬品(24%)。

4. 感想

まずは、成人を含めた様々なアレルギーの有病率の調査がやっと日本でも始まって、本当に良かったと思いました。大きな進歩だと思います。

 

成人の食物アレルギーの有病率も、今までの推定より、かなり高そうだということが示唆され、今後、治療体制強化に結び付くといいなと思います。

 

また、花粉症に加え、喘息・慢性蕁麻疹・食物アレルギーを成人発症した私にとっては、アレルギー疾患全体の有病率を把握し、成人の併発のメカニズム等、今後の治療研究に繋がるといいなと思います。

 

5. 収集方法についての疑問

その反面、アンケートの収集方法について、疑問が残りました。

 

a. 誰から集めるか

国民の全世代のアレルギーの有病率の現状把握が目的の調査で、アレルギー拠点病院の職員と家族と絞ったデータ収集は、適切なサンプル選択だったかという疑問が残ります。

 

アレルギー拠点病院の職員・家族というグループは、一般人とアレルギーの知識レベルも、医療へのアクセスも大きく違う。一般人より受診率・正診率・有病率が有意に高くならないのだろうか?

 

収集した年齢層の分布も、人口分布より0-10歳の割合が大幅に高かったり、男女比も女性が男性より29%高い。集めたサンプルデータから、人口全体の有病率を推定する上で、どのような補正をされるのかなと思いました。

 

データ収集について、報告書内に次のような記載がありました。

個人情報にアクセスする難しさから紙ベースでの全数調査を実施することは極めて困難であり、本研究手法は実行性の点から今後も利用可能なものと考える。

 

サンプルの適切性より、収集の実効性を優先されたと推測されます。もっと一般国民を代表するように、ニュートラルに、幅広く収集する方法は難しかったのでしょうか? 

 

アメリカでも、CDCがアレルギーの有病率調査を行っている。日本で毎年行われている国民健康調査に追加するとか、また、デジタル庁の協力でWeb調査で、個人情報保護法の問題クリアーできるアンケートにする等はできないのでしょうか? 

 

b. 役所と学会・医師の役割分担

アレルギーに限らず他の疾患でも、国民の疾病統計業務は、誰がどのように行っているのか疑問に思いました。厚労省内に疾病統計の専門部隊はいないのかな? コロナの時に問題になったけど、感染症以外は改善されていないのだろうか。本来、役所が執り行うべき疾病統計業務を、臨床・研究で忙しい医師やアレルギー学会に依存しすぎなのでは?

 

厚労省・消費者庁等が補助金を出して、医師が学会の権威の及ぶ範囲で、何とか調査に協力してもらえる「つて」を駆使しながら調査する。国としての国民の疾病統計のデータ収集の方法が、これでいいのか?と疑問が残ります。

 

今回の調査も、役所に把握する機能がなく、学会の影響力の及ぶ範囲内のアレルギー拠点病院の職員・家族を、データ収集対象とせざるを得なかったのでは、と推測します。

 

消費者庁の3年毎の食物アレルギーのモニタリング調査でも、同じ問題が起こっているように思われる。学会経由、アレルギー専門医に収集チャネルを頼る形で、結果的に小児に偏る収集になってしまい、成人のデータ収集やモニタリングが不十分な可能性が高い。

 

学会・医師が研究目的でする調査と、国民の生活や医療政策を決定する為の、公的な疾病統計のデータ収集は、目的も主体も収集方法も違うはず。

 

税金を投入しての公的な疾病統計、法律を受けての有病率調査等は、本来は役所主体で収集し、一般国民を反映した統計となるよう、中立的で、偏りのないニュートラルな収集方法で進めるべきと思います。

 

学会・医師は、医療的・学術的なアドバイスをしたり、分析を手伝ったりという役割分担が適切だと思います(希少疾患のように、医師主体でないと症例を把握できない特殊ケースを除き)。

 

収集計画を立て、複数の省庁から、局所的な調査が複数走らないよう整理する。税金が効率的に使われるよう、調査の費用対効果等を管理するのも、CDCのように役所の役割だと思います。

 

医師不足・人口高齢化の加速する日本では、疾病統計は今まで以上に大切になる。国が現状を把握し、医療対策をタイムリーに打つ、優先順位をつけてリソース配分する必要性が、益々高まると思われます。

 

アレルギー疾患対策基本法制定から10年。最初に把握すべき、有病率データの収集で苦労している状態に、一人の国民・患者としては、かなりもどかしい思いです。

 

c. 学会の壁を超えた連携

 

問題の根底に、日本のアレルギー問題を、アレルギー学会の影響力の及ぶ範囲で把握し改善しようとしていないか、という疑問があります。日本のアレルギー問題は、アレルギー学会の「影響力の及ぶ範囲 (Sphere of Influence)」外で起こっている事も多く、アレルギー学会内でやりくりするのが、そもそも無理だということに、気付いて欲しいです。

 

成人は小児と違い、幅広い診療科でアレルギーを診てもらう。他の学会や診療科の医師達と一緒に、調査・ガイドライン作り・情報発信・医療関係者の教育強化等をしないと、成人アレルギー治療の改善には有効に効いてこない。アレルギーの専門医と非専門医の垣根を、もっと打ち破っていかないといけないのでは? 

 

私見ですが、専門医・非専門医を問わず、最初の受診窓口になった医師が誰でも、アレルギーを適切に診断でき、早期に治療に繋げられること、そして難しい症例は遅滞なく専門性のある医師に紹介され、早期の診断・治療につながる事が、一般国民や患者さんから求められているゴールの一つなのでは? 

 

今回の調査には、小児アレルギーの医師だけでなく、様々な診療科、成人のアレルギーの医師も参加されて、その結果、疾患の幅も年齢層も広く把握することができてよかったと思います。 

 

今後行われる、全世代が対象のアレルギー調査は(消費者庁の食物アレルギーモニタリング調査も含め)、ぜひ同じような体制で進めて欲しいです。ニュートラルで偏りの少ないデータで、全体を把握した上で、国のアレルギー対策として、どこを優先的に改善・強化するか、判断して頂きたいと一国民として思います。

 

そして、アレルギー学会自体も、日本小児アレルギー学会と日本アレルギー学会があります。

 

患者や国民の視点では、一本化された組織の方が、小児から成人までカバーされメリットが大きいように思います。専門医にとっても、幅広い年齢層の症例に触れる機会や視野を持てたり、専門は違っても、良いやり方を学び合えるメリット、コラボによるシナジー効果もありそうですが・・・

 

小児科医の減少、成人発症のアレルギー患者の増加等で、特に地方では、1人の医師が、小児・成人患者の両方、複数のアレルギー疾患を今よりフレキシブルに診れる体制が必要になってくると思われます。そういった、医療の需給ギャップを検討をしていく上でも、学会が一つの方が、足並みを揃えて良い対策が打てそうだと思います。

 

d. 患者さんからのデータ収集

 

食物アレルギーに話を戻します。今まで、日本の食物アレルギーの有病率(全年齢)は1-2%と、低く推定されすぎていた事は明らか。今まで把握できていなかった患者さんが多くいると思われる。

 

次に出てくる疑問は、把握されていなかった患者さんの特性、どこでどういう治療を受けているのか、困り事が起こっているかどうか。

 

地方では成人を診てくれる病院がない、何件も渡り歩いた、小児科に行っても断られて諦めた、予約が数ヶ月取れない等は、成人の食物アレルギー患者さんからはよく出てくる問題。また、小児から成人に移行期の患者さんには、違った問題が起こっている可能性もある。患者さんのアンケートや治療できる病院の分布等も見ながら、データで問題点をはっきりと現状把握できるといいと思います。

 

こういう分析に発展していく際にも、アレルギー拠点病院の職員からのサンプルデータでは、一般人を代表できない。アンケート調査は継続されるようですが、次の調査の際、例えば医療へのアクセスについてや、発症から診断までの期間等の質問を追加したくなっても、一般人と大きく違うサンプルの集団で、意味がない、深堀りできない。

 

やはり、有病率のようなデータは、特殊な集団からサンプルを収集するのではなく、できるだけ一般の国民を代表できるような人たちから、データを収集するべきだと思います。

 

患者さんから見たアンメットニーズも現状把握され、医療の現場で有効な対策に繋がるといいと思います。

 

6. アニサキスの方針を話すべき

 

調査結果の食物アレルギーの原因物質が、甲殻類や魚、でも診断はまだ出ていないと回答されている方の中に、アニサキスアレルギーの方が潜んでいるかも、と思いました。

 

寄生虫アレルギーのアニサキスを、食物アレルギーの調査上どう扱うのか、厚労省・消費者庁・農林水産庁・アレルギー学会等の関係者で、まず方針を話し合った方がよいと思います。

 

患者・消費者の視点では、食物を食べて、最悪の場合にはアナフィラキシーショックになるアレルギー。でも、医師・研究者の学術的な視点では、寄生虫アレルギーで、狭義の食物アレルギーではないので、分析から常に除外されている。

 

アニサキスは、救急受診の成人アナフィラキシーの原因のトップクラスになりつつある。アニサキスも食物アレルギーの分析に一緒に加えて、現状把握や注意喚起をした方が、患者さんや消費者的にはいいと思うのですが、何かデメリットがあるのでしょうか? 

 

命を落としてしまう患者さんが出てからでは遅いので、分析から除外せず、適切な注意喚起をして頂きたいです。

 

先週、初めて消費者庁と厚労省の国民の声窓口に電話しました。アニサキスアレルギーの注意喚起と、入院食・介護食のアレルギー対応(アニサキスに限らず全般的に)をお願いしました。

 

時間がかかるのに、診療報酬が低すぎて、アレルギー専門医のなり手がいないという問題。食物アレルギーに関しては、成人を診れる専門医が、日本で20名程度かもしれないという、難病のような問題。

 

成人患者は小児の患者さんと違って、治療経験や意見をはっきりと話せます。医師だけでなく、もっと成人患者が一緒になって、国や厚労省に働きかければ、改善に繋がりやすいかもしれません。国のアレルギー対策の検討に、患者が参加できる機会を増やして欲しいです。

 

いろいろぼやきましたが、アレルギー疾患について、現状把握した上で、適切な策を考えていこうと、取り組んで下さっている方々に、本当に感謝します。

 

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海外の食物アレルギー情報④ ハロウィン

 

今日は、ハロウィンのティールパンプキン、カリフォルニア州のElijah's Law制定について書きます。

目次

1. ティールパンプキン

アレルギーの前に、ちょっと違う話題、ピンクリボン運動についてです。10月は乳がん月間で、建物がピンクにライトアップされたり、ピンクのドローンやランタンも飛んだりしましたね。 私の家族も、母を含め3名が乳がんサバイバー。私自身も20代から30年以上、毎年検診を受けています。アメリカで1980年代に始まったピンクリボン運動。日本でもすっかり定着し、乳がん検診の大切さが広まり、嬉しいなとニュースを見ていました。

 

ところで、食物アレルギーも同じように認知度アップ活動があるのをご存じですか? アメリカのティールパンプキン(青緑色のかぼちゃ)プロジェクトです。

 

ハロウィンは、食物アレルギーのある子供たちにとっては、ちょっと注意が必要なイベント。普段交流がない人からもお菓子をもらい、うっかりアレルゲンの入った物を食べてしまう危険性があるからです。

 

そんな中、他の子供たちと一緒に、安全にハロウィンを楽しめるようにするための取り組みが、ティールパンプキンです。一般の人にも食物アレルギーのことを知ってもらい、コミュニティー全体でアレルギーのあるお子さんもインクルーシブに受け入れるという、とても意味のある取り組みだと思います。

 

通常、ハロウィンの時期にはオレンジ色のかぼちゃ(ジャックオーランタン)が飾られます。青緑色のランタンが置かれている家は、食物アレルギーの子供さん用の安全なTreatが用意されているサイン。 例えば、クモのおもちゃとか、光るブレスレット、ステッカーとか。大人の私も欲しいかも。

www.parents.com

この活動は、テネシーで始まり、その後以前のブログで紹介した、アメリカ最大の食物アレルギー非営利団体FAREがアメリカ全土に拡大しようとしています。

www.foodallergy.org

3年前から、大手のドラッグストアCVS Pharmacy(日本のマツキヨみたいにどこにでもある)がFAREに協力。アメリカ全土の9000店舗以上で、食物アレルギーの子供用の60種類以上の食物以外のTreatを購入できるようにしています。

www.cvshealth.com

2. カリフォルニアElijah's Law制定

今日はもう一つ、カリフォルニアで小児を預かる施設で、食物アレルギーの子供の安全を強化するための法律が制定されたことを、お伝えしたいと思います。

 

2024年9月25日、Elijah’s Lawがカリフォルニアで承認されました(施行は2028年1月1日)。この法律は、2017年にニューヨーク市の保育施設で、チーズ入りのサンドイッチを食べアナフィラキシーで亡くなった、3歳児のElijah-Alavi Silveraの名前を取ってElijah’s Lawと呼ばれています。

 

この法律により、緊急時に施設スタッフがエピネフリンを適切に打てるよう、訓練が義務化されました。州の救急医療組織の管理下、保育施設の健康安全責任者や教師等、少なくとも1名が最低15時間以上の研修を受けることが義務化されました(食物アレルギーやアナフィラキシー、エピペンの打ち方、小児のCPR等)。

 

また、食物アレルギーの子供一人一人に対し、保育施設が緊急時の対処計画を定めることも義務付けられた。2027年7月1日までに、州の社会福祉部門が保育施設スタッフ向けのアナフィラキシー・ポリシーを作成。保育施設は2028年1月1日までに、そのアナフィラキシー・ポリシーを導入し、子供のアレルギー情報が明確にコミュニケーションされること、またアレルゲンへの暴露リスクを減らすため計画等を定めることが義務付けられました。

 

日本の保育園をイメージしていたのですが、法律をよく読むと、対象となる保育施設の範囲はかなり広い。18歳未満の子供を預かる保育施設、デイケア、日本の「保育ママ」のような個人宅の保育施設、企業の従業員向けの保育施設等を含むと書かれています。

 

アメリカでは子供を他人に見てもらう、預かってもらう必要性が高い社会なんです。例えば、産後遅くとも2-3か月で仕事復帰しないと、もうその仕事には戻れない、日本より相当厳しいです。乳児を預ける割合も日本より高いと推測されます。夫婦共働きでも、一人分の親の稼ぎは全部チャイルドケアやシッターに払われ消えていく、とみんなよくぼやいています。シングルペアレントで子育てと仕事を頑張っている方も多い。また、日本のように小学校の子供が一人で家でお留守番は、法律で許されていません。ニグレクト、児童虐待の疑いですぐ通報されてしまいます。なので、保育施設・シッターさん・保育ママ等に子供見てもらう期間・時間が長い、頻度が高い。そのため、保育施設で食物アレルギーのお子さんの安全性を確保するニーズが高いという背景もあります。

 

この法律は、ニューヨーク州、イリノイ州、バージニア州、メリーランド州に続き、カリフォルニア州が、導入5番目の州となりました。カリフォルニア州では、2022年に州知事によって一度否決されています。導入にステークホルダーの同意が得られないというのが理由でした。

 

その後、様々な団体や草の根運動で粘り強くがんばり、2年で承認に漕ぎつけました。アメリカの食物アレルギーの非営利団体や草の根運動の、政治への働きかけ、影響力は本当にすごいです。 日本でも、自分も含めて患者さんがもっと政治や行政に、しっかり物申さないといけないのかもと、ちょっと思いました。

3. 感想

今週末は、ハロウィンの飾りつけをしようと思っていたので、青緑色のを作ってみようかと思います。アレルギーになるまで、アレルギーのあるお子さんの事を真剣に考えた事がありませんでした。自分の中に、アレルギーによる良い変化も起こっている気がします。

 

皆様も、ハロウィンの飾りつけをどこかで見かけたら、ティールパンプキンや食物アレルギーのお子さんのこと、少し思い出して下さい😊。そして、仮装をされる大人の方。渋谷とかでDJポリスに捕まらないよう、安全にを楽しんで下さい。

 

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海外の食物アレルギー情報③ 日米統計比較

 

今日は、アメリカの小児の食物アレルギーの有病率、日本の消費者庁の食物アレルギーの調査、国としての疾病のデータ収集について書きます。 

目次

 

1. アメリカ小児の有病率

以前のブログで、アメリカの食物アレルギーの調査に2021年から成人が追加されたことをお伝えしました。今日は、同時に行われた小児の有病率調査についてお伝えしたいと思います。

www.cdc.gov

  • 0-17歳の小児の食物アレルギー有病率は5.8%、男女間で有意差なし
  • 0-5歳は 4.4%、6–11歳が5.8%、12-17歳が 7.1%。年齢が上がると有病率が上昇、有意にリニアトレンド
  • 人種別:Black 7.6%、White 5.3%、Hispanic 5.0%、Asian 6.6%

2. 私の感想

この調査結果を、アメリカの成人の有病率、日本の有病率(食物アレルギー研究会 食物アレルギーの診療の手引き2023に記載)と比較してみました。統計的な分析はできないので、ざっくり見ての感想です。

  • アメリカの成人の有病率6.2%は、小児の5.8%と同じ位高い。日本では小児の有病率は高く、成人は低いと考えられており、アメリカの調査結果と大きく違う。
  • アメリカの有病率は、小児は年齢と共に上昇し、12-17歳でピーク、18歳以降は緩やかに減少。(12-17歳が7.1%、18-44歳が6.6%、45-64歳が6.7%、65-74歳が5.1%)。有病率の世代ごとの変化が自然な感じ。
  • 日本の有病率のデータは、乳児が7.6%-10%、2歳児が 6.7%、3歳児が約5%、保育所児が4.0%、6-17歳が6.3%、成人のはっきりしたデータがなく、全年齢を通して1-2%と推定されている。日本は成人になると有病率が急激に下がるのが疑問。
  • 日本の6-17歳の有病率は6.3%。アメリカは、6–11歳が5.8%、12-17歳が 7.1%。この世代は2国間で有病率は大きな差がない。上の成人の世代になると、2国間で大きく差が出てしまう。やっぱり、日本の成人の有病率は低く推定されすぎてるのかな。

引用した、食物アレルギー研究会の情報はこちらです。

www.foodallergy.jp

3. 消費者庁の調査

さて、ここからは日本のデータについて書きます。 日本では、2009年9月1日から食物アレルギーに関連する表示関連業務が、厚労省から消費者庁に移管されました。消費者庁では、医師に協力を依頼し、3年毎に即時型食物アレルギー全国モニタリング調査を行っています。この調査は、有病率の把握が目的ではありません。消費者庁が、食物アレルギーの発生件数を把握して、アレルギー表示義務のある原材料を決めたり、アレルギーによる健康被害の発生防止・注意喚起等をする目的で行われています。

 

最新の報告書は2022年3月に出された「令和3年度 食物アレルギーに関連する食品表示に関する調査研究事業 報告書」です。下記サイトの下の方に添付されています。

www.caa.go.jp

4. 私の感想

a. 年齢別の発生件数が有病率と誤解されないか心配

報告書の一番最初に、非常にインパクトの強い、年齢別の発生件数の棒グラフが出てきます。解析された6080件の内、0歳だけで1800件以上、0-6歳までは発生頻度が高く、成人の件数は非常に少ない。これを見たら、「成人はめったに食物アレルギーにならない。食物アレルギーのお子さんはたくさんいてかわいそうね」と、多くの方が思われるのでは?と推測します。

 

でも、この調査は各世代の食物アレルギーの有病率の把握を目的とする調査でなく、全ての年代の人口分布等に応じて網羅的にデータを収集する方法で行われていないと思われます。令和3年度の調査では、アレルギーを専門とする医師(日本アレルギー学会指導医及び専門医並びに日本小児アレルギー学会会員)の中から1089名の医師が協力したと記載されています。

 

例えば、小児科の医師が多く協力した場合、報告される件数は小児がほぼ100%、成人はほぼゼロ。また、成人がアレルギー専門医でない皮膚科や内科の医師から、食物アレルギーの診断を受けても、この棒グラフの成人の件数には一切入ってきません。

 

そして、お子さんが蕁麻疹や下痢・嘔吐等のようなアレルギー症状を起こしたら、すぐ小児科・アレルギー科にかかることが多いと思います。成人の場合、ひどい症状か、頻繁に起こらなければ、忙しくて受診しない場合も多い。受診窓口も皮膚科・一般内科・消化器内科・耳鼻科・救急等と非常に幅広く、アレルギー専門医を受診しない可能性も高い。この収集方法だと、成人の食物アレルギーが発生していても、収集されず漏れてしまう割合が高いのではと推測します。(私も初診はアレルギー専門医でない循環器内科でした)。

 

この調査結果は、食物アレルギーの注意喚起のために、多くの資料で使われています。ですが、データ収集方法について言及がないことが多く、「成人はほとんど発症しない」という誤解に繋がらないといいなと、少し心配です。

 

b. アナフィラキシーショック率、成人高い?

この報告書で、もう一点、気になる点があります。7ページに年齢別のショック率の記載があります。 

年齢群別のショック率は、0歳群が8.1%、1・2歳群が8.2%、3-6歳群が13.0%、7-17歳群が12.1%、18歳以上群が24.6%で、18 歳以上群の発症率が高かった。

 

成人のショック率が、他の年齢層よりかなり高いのが心配です。報告された成人のケースの4人に1人は、アナフィラキシーショックで、生死に関わる状態だったが、これ以上記載はない。命に関わることなので、もう少し詳しい状況を知りたいと思いました。

 

データの収集方法の問題で、ショックに至らない軽症の成人患者さんが把握されていない? それとも、成人発症の場合、前触れなく突然ショック状態で発症することが多い? 軽い症状が出ていても未受診、診てくれる病院がない、診断がつかない等の原因がある? どういうタイプの成人やアレルゲンが、ショック状態になる件数が多いのだろう? 成人のアナフィラキシーショックを減らすには、早期診断等、何らかの予防策はある?

 

この調査では、アニサキスが原因の70件の報告も、狭義の食物ではないので、分析から除外されています。成人の場合、アニサキスでアナフィラキシーショックで発症する方も相当数いると、いくつかの大学病院の救急受診のデータでは出ています。でも、この調査の分析からは除外されており、注意喚起に繋がらないのです。

 

以前のブログで、オーストラリアのビクトリア州では、病院でアナフィラキシーの診断が出たら、食物・ワクチン・医薬品・原因不明でも、報告義務があることをお伝えしました。

 

日本でも、同じようにアナフィラキシーやアナフィラキシーショックのデータ収集・一元管理を検討する必要があるのでは? 厚労省で医薬品・ワクチンのアナフィラキシーだけ、局所的にデータベースで管理するのでなく、食品や食品関連(アニサキス等も含め)、昆虫、原因不明のケースも、網羅的に把握した方がよいのでは?と思いました。

 

5. 国としての疾病対策のデータ収集・一元管理の強化

アメリカでは、全てがうまくいっている訳ではないけれど、法律を制定したり、成人を調査対象に加えたり、質問を加えて有病率の精度を上げようとしたり、食物アレルギーについて正確な現状把握をしようと頑張っている。

 

日本でも、小児から成人までの各世代の食物アレルギーの有病率を、もう少し網羅的に偏りなく把握できるような調査を検討すべきではないでしょうか? 

 

現在の消費者庁の3年おきの調査では、小児科やアレルギーを専門とする医師を収集チャンネルとしており、正確な成人の有病率に結び付かない可能性も高い。他の収集方法、例えば、国民の健康調査に食物アレルギー・他のアレルギーに関する質問を追加して、全世代の有病率をもう少し正確に把握したり、他にどんな方法が可能なのか検討してみるべきでは?と思いました。

 

そして、食物アレルギーの世代別の有病率やアナフィラキシーの発生頻度のようなデータ管理は、厚労省が行うのか、消費者庁が食物アレルギー表示業務の一環として行うのか、抜け漏れだぶりがないよう、税金を無駄に使わずに効率的に行えるよう、省庁横断的に協力して進めて欲しいと思いました。

 

私は、食物アレルギーも含め、疾病に関するデータ収集や分析は、CDCのようにもっと一元化すべきなのではと思います。日本では、食物アレルギーに関して文部省、消費者庁、厚労省等、複数の省庁がばらばらと局所的な目的で調査しすぎで、つぎはぎで全体像が見えない問題を起こしているように思います。もっと省庁横断的に、疾病に関するデータ収集戦略が必要なのではと思います。何のデータを、どういう目的で、どのように収集するか。リソース体制、予算をしっかり付けて、効率的・効果的に調査・分析できるようになるといいなと思います。学会等を通して医師にデータ収集の協力仰ぐものと、国の公的な疾病統計として偏りが生じにくい、他の方法で収集すべきものを、整理した方がいいように思います。

 

全体像の現状把握ができれば、課題も優先順位も明確になって、より効果的なアレルギー対策が打てるのではと思います。特に、今まで光が当たっていなかった、成人の食物・食物関連アレルギーの治療や診断後支援、成人のアナフィラキシーショックで発症する件数を減らすなど、新しい取組につながるといいなと思います。また小児で発症後、成人になってアレルギーが残っている患者さんがどの位の割合でいるのか、移行期に困っている事はないのか等も、もっと分かるといいなと思います。

 

食物アレルギーが小児に限られた病気ではなく、患者さんの様々なライフステージを通して、どう医療や社会が関わっていくべきなのか、日本も立ち止まって考える時期だと思います。

 

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海外の食物アレルギー情報 ②

今日は引き続き、海外の食物アレルギー情報をお伝えします。アメリカの食物アレルギーの法律、オーストラリアビクトリア州のアナフィラキシー報告義務化、そして日本での食物アレルギーの現状把握・データ収集について書きます。

目次

 

1. アメリカの食物アレルギーの法律 FASTER Act of 2021


前回のブログで、アメリカでは2021年の調査で初めて成人が追加され、成人の食物アレルギーの現状把握を強化する動きがあったことをお伝えしました。そのきっかけになった法律についてお伝えします。

kozakura5.hatenablog.com

 

アメリカでは、バイデン政権下、通称「FASTER Act of 2021」と呼ばれる法律が2021年4月承認、2023年1月に施行されました。

  • Food Allergy Safety, Treatment, Education and Research Act of 2021
  • 食物アレルギーと関連疾患(生命を脅かすアナフィラキシー、食物蛋白誘発胃腸炎、好酸球性消化管疾患等を含む)のある、アメリカ人の健康と安全の改善を目的とした法律
  • Secretary of Health and Human Services (日本の厚労大臣的な人)とその配下にあるCDC(Centers for Disease Control and Prevention、コロナの時よくテレビに出てきましたよね)に対し、食物アレルギーの有病率のデータ収集の強化・精度の向上を求め、議会に報告する義務を定めた
  • この法律を受け、2021年の調査から、小児だけでなく成人も対象に追加。有病率の精度向上のため「医師・医療関係者から食物アレルギーがあると言われことがあるか?」という質問も追加された。

“Do you have an allergy to one or more foods? (Read if necessary: Food allergies are different from food intolerances, such as lactose and gluten intolerance, and other digestive disorders, including irritable bowel syndrome.)”

“Have you ever been told by a doctor or other health professional that you had an allergy to one or more foods? Food allergies are different from food intolerances, such as lactose and gluten intolerance, and other digestive disorders, including irritable bowel syndrome.”

  • 日本の厚労大臣的な人に対して、この他にも議会にいろいろな報告しなさい、というのが定められた。例えば、効果的な食物アレルギーの診断方法、食物アレルギーのある人の生活上のリスクを軽減する方法、表示義務のある主要な食物アレルギーの原因物質を決める際、科学的な根拠に基づいて行える仕組みの提案等。 
  • 「ごま」が9つ目の主たる食物アレルギーを起こす原因として追加され、表示義務が必要になった

2. この法律の意味するもの、感想 


この法律ができる前は、食物アレルギーのデータ収集が不十分だったり、精度に問題があった。そこで法律を制定し、しっかり予算をつけてデータを収集を強化している。小児だけでなく、成人の食物アレルギー・関連疾患についても、しっかり見ていこうという、国としての方針が示された訳です。

 

また、現在9つ指定されている、表示義務のある食物アレルギーの主たる原因物質ですが、今後増えることも想定していると思われます。科学的根拠と透明性を持って、遅滞なく指定できる仕組みを作りたいと、法律で方向性をしっかり打ち出しています。

 

日本ではアレルギー疾患対策基本法が制定されました。アメリカでは、アレルギー疾患の中でも、食物アレルギーとその関連疾患という、的を「ぎゅーっ」と絞った法律も制定されました。食物アレルギーを何とかしたいという、国としての意気込みを感じますよね。

 

日本では花粉症への意気込みは感じますが、成人の食物・食物関連アレルギーはそこまで問題視されていない。なぜだろうか? 日本でも、まずきちんと現状把握から始めて、正しい課題を設定してほしいです。

 

3. オーストラリアビクトリア州 アナフィラキシー報告義務化 

2018年から、オーストラリアのビクトリア州では、小児と成人両方のアナフィラキシー情報の登録が義務化されました。公共・民間の医療機関共に、診断から5日以内に、パッケージで包まれた食品が原因の場合は、診断から24時間以内にオンラインでの報告が義務化されました(パッケージで包まれた食品は、表示に問題がある場合、消費者に即注意喚起をできるようにするため即時にした)。

 

食品だけでなく、ワクチンや薬剤等によるアナフィラキシー、原因不明のアナフィラキシーも報告義務があるようです。 

 

アナフィラキシーの情報を標準化されたフォームで収集分析し、アナフィラキシーの発生を防ぐための有効な施策に結びつけようという、本気度を感じます。安易な対処策や表面的なキャンペーンに流れず、地味で大変だけど、しっかりしたデータ収集から始める。問題解決の基本的なステップをきちんと踏んでいる所が素晴らしいと思います。

 

www.health.vic.gov.au

www.health.vic.gov.au

4. 日本でも現状把握、頑張ってほしい


海外では、成人の食物アレルギーや、アナフィラキシーについて、現状把握をしっかりやろう、その上で、課題を明確にし、効果のある施策を検討していこうという取り組みが始まっています。それに対し、日本では、まだまだ現状把握が不十分なように思います。

a. 成人の食物・食物関連アレルギーのデータが不十分?

日本では、食物アレルギーの有病率、食物によるアナフィラキシーの統計の全体像がはっきりとしないんですよね。

 

例えば、各世代ごとの食物アレルギーの有病率。そして、一体、日本全体では年間何件の食物・食物関連のアナフィラキシーが起きているのか? その内、何件が小児で何件が成人なのか? 全体で、また特定のセグメントでの顕著な増減の傾向があるのか?(例 成人発症が増えている、特定のアレルゲンの発症が増えている等)。

 

有病率については、食物アレルギー研究会の食物アレルギーの診療の手引き2017と2023両方見てみました。成人の有病率は、何のデータを使ってどのように推定されているのか不明でした。また「全年齢を通して、わが国では推定1-2%程度の有症率であると考えられる」という記載も、根拠がよく分かりませんでした。

食物アレルギーの診療の手引き2017 

www.foodallergy.jp

食物アレルギーの診療の手引き2023 (10ページ目に有病率の記載あり)

www.foodallergy.jp

アナフィラキシーについても、6歳以上のお子さんについては下記のような分かりやすいデータがありました。同様の成人のデータは見つからず、また全体像が分からない、小児の一部のデータだけあるんですよね。 


成人のいくつかの拠点病院の各病院レベルの食物関連アナフィラキシーのデータも一部ある。でも、全国で何件起こっているのか、全体像は分りませんでした。

www.jsaweb.jp

b. アニサキスはいつも仲間外れ?

 

そして、もう一つ、アニサキスについてです。日本の成人の救急外来受診のアナフィラキシーの原因で、アニサキスが相当数あるにもかかわらず、統計に出てこない。

 

寄生虫アレルギーで食物関連アレルギーであり、狭義の食物アレルギーに当たらない。なので、食物アレルギーの原因の円グラフには表れない、カテゴリーの問題なんですよね。ここでも、全体像が見えない問題が起こっている。

 

www.nhk.jp

エピペンの会社のヴィアトリスさんの日本サイトにも、アナフィラキシーの原因として、アニサキスについての記載はありませんでした。成人のアニサキスの方々が多く処方されていると思いますが、ちょっと残念です。小児患者さんのご家族をターゲットに書かれているからだと思いますが、ここでも、やはり「小児と成人の食物アレルギーの壁」を感じてしまいます。

 

ヴィアトリスさん、サイトアップデートして、アニサキスアレルギーの認知度アップにご協力下さい。

allergy72.jp

c.  感想

日本の成人の食物アレルギーの有病率は、様々な数字があり、何が現状のコンセンサスなのか、分かりませんでした。アメリカの成人の有病率6.2%より、複数の資料でかなり低く推定されている感じ(1%など)。

 

もし、日本の成人の食物アレルギー有病率が、海外の有病率より有意に低い場合、その原因は何なのか、深堀りする必要があると思います。

 

食物アレルギーが日本の成人に起こりにくい理由がある? 日本での成人のデータ収集が不十分・精度が悪い? 収集・分析に小児を重視するバイアスが働いている? 成人の未受診・誤診・診断つかずのケースが多い? 原因不明で解析から除外されている件数が多い? 他に原因がある? 

 

細かくSlice & Diceの分析をする前に、ビックピクチャーでどうなのか、全体像をもっと把握する必要があるのではと思いました。

 

日本も世界の流れに遅れず、まずしっかりとした現状把握から進めて、正しく課題を設定して、有効性のある解決策を導入してもらいたいと思いました。

 

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海外の食物アレルギー情報 ①

今日は、アメリカの食物アレルギー関連情報をお伝えします。点鼻スプレー式のエピネフリンの処方開始、成人も対象に入っている食物アレルギー患者団体、アメリカの成人の食物アレルギーの有病率について書きます。

目次

1. neffy® がアメリカで処方可能に

8月9日にFDAに承認されたneffy®(点鼻スプレー式のエピネフリン)が、9月25日からアメリカで処方可能になったようです。日本では2024年中の申請を目指している模様。子供も大人も針はちょっと怖い。私も、もしもの時に落ち着いて針をさせる自信がないので、興味があります。

doctor.mynavi.jp

2. 成人の食物アレルギー患者会がない

日本では食物アレルギーといえば、小児の患者さんが主。「成人は視野に入っていない、忘れられている、悲しい・・・」と思うことがよくあります。説明の冊子やウェブサイト等も、小児の患者さんの家族・学校等に向けて書かれているものがほとんどで、成人には当てはまらないことも多いです。私の調べる限り、成人の食物アレルギーを対象にしている患者会、特定NPOはなさそうです(小児が主体)。

 

アニサキスの団体はあるのですが、私個人の感想ですが、対象を単一のアレルゲンに絞らずに、広く食物・食物関連のアレルギーのある成人のための患者会があったらいいなと思います。その中に、必要ならばアレルゲン別の分科会があるという構造の方が、多くの成人患者さんのためになるように思います。小麦もアニサキスも、除去が大変なのは同じだし、複数のアレルギーがある患者さんも結構いるし。

 

アレルゲンで縛らない方が、成人の食物・食物アレルギーに共通する、社会生活との両立のためのアドバイスや情報を幅広く集積できる。他のステークホルダー(学会、国・自治体のアレルギー担当、民間企業等)に対しても、単一のアレルゲンの成人患者会よりも説得力が出るし、認知度も組織の運営効率も上がるのではと思いますが、いろいろな事情があるんでしょうね。

 

どういう形であれ、成人の食物・食物関連アレルギーの患者さんが、診断後必要な支援を受けられる環境になればいいなと思います。

 

3. アメリカの食物アレルギー団体

さて、日本にないなら、海外の情報を探してみようと検索した所、こちらの組織 Food Allergy Research & Education (FARE) が見つかりました。 食物アレルギーのある成人向けのページがあり、ちょっと嬉しくなってしまいました。

www.foodallergy.org

日米で環境が違うので、全て当てはめる事はできませんが、いいな、面白いなと思ったことがありました。

 

例えば、仕事に関連し、新しい職場で働き始める際に、上司と同僚に自分のアレルギーのことを話した方がいいこと、エピペンの場所と打ち方を伝えること、出張や研修時のアドバイス、雇用主も法律に基づいて、アレルギーを持つ従業員に十分な配慮をする義務があること(アレルギーも障がいの1つの形と考えられている)。

 

仕事以外では、付き合う相手にアレルギーのことをどう話すかや、アレルギーがあっても安全にできるデートの例、外食するときの注意点、アレルギーフレンドリーな大学の選び方、大学入学で親元を離れるの大学生へのアドバイス、除去食のレシピなどもあり、情報満載で、ちょっとわくわくする感じでした。小児から成人への移行期にアレルギーが残っている患者さんに役立つ情報も多く発信されています。

 

この例からも、アメリカの食物アレルギーが、子供から、ティーンエージャー、大人へという全てのライフステージにおいて、アレルギーという疾患を持ちながら、どう生きていくかが視野に入っていることが分かります。各ライフステージで起こる変化に、どう安全に疾患と共存しながら、その人らしく生きられるかを目標にしていることを感じられます。

 

それに対し、日本の食物アレルギーに関する情報発信や支援は、小児をターゲットに親御さんや周りの環境中心に限られている、ライフステージは考えられていなく、大きな違いを感じます。

 

成人の場合、「検査で陽性でした」で終わり。栄養指導も保険適用外、どう除去するかも孤独な手探り。成人としての生活とアレルギーをどう両立していくか、冊子もサイトも、支援団体もない。自分で小児向けの情報の中から、使えそうなものを拾いながら、何とかするしかない。

 

世界的にも、成人発症の食物・食物関連アレルギーについての議論や統計が増え、軽視できない状況になりつつある。 日本でも、食物アレルギー治療・支援における「小児と成人間の大きな壁」を取り払い、誰でも同じようにアレルギーの治療ができ、支援が受けられる環境を整える必要があります。成人が主だったアニサキスアレルギーも、小児発症の症例も報告され始めていますしね。

 

4. アメリカの成人食物アレルギーの人ってどの位いるの?

成人の食物アレルギーの患者さん向けの情報が結構充実しているのは、成人の患者数も多いのかなと思い、調べてみました。

  • 2021年のNational Center for Health Statistics (NCHS) によると、アメリカの成人の食物アレルギーの有病率は6.2%
  • 年代別では、18〜44歳が6.6%、45〜64歳が6.7%、65〜74歳が5.1%、75歳以上が4.5%で、年齢層が上がるにつれ低下
  • 性別では、女性が7.8%で、男性の4.6%より有意に高かった
  • 人種別では、Black 8.5%、White 6.2%、Asian 4.5%、Hispanic 4.4%だった
  • 以前のNCHSの調査では、小児(0〜17歳)のみが対象だったが、2021年から成人も初めて対象に加えた
  • 食物に反応が出るかという質問だけでなく、医師からアレルギーの診断を受けたかどうかも質問項目に加えたので、データの信頼性も向上したと思われる

www.cdc.gov

 

日本の成人の食物アレルギーの有病率は、いろいろな資料で違いがあり、よく分かりませんでしたが、1%前後という低いものもありました。

 

アメリカの成人全体で6.2%、アジア系成人で4.5%という数値を見ると、日本でも、潜在的な成人の食物アレルギーの患者さんが相当数いる可能性もあると思います。日本でも、アメリカのように網羅的に、成人食物・食物関連アレルギーの全体の現状把握の必要があるのかもしれません。

 

社会全体でいろいろな人が協力して、成人も含めた食物アレルギーの診療体制、診断後の支援体制の整備も進めていって欲しいと思いました。花粉症を診てくれる病院は既に星の数ほどあるのに、成人の食物アレルギーを診て頂ける病院は本当に少ない。アンメットニーズのある所を増やす必要があると思います。

 

みんなでタッグを組んで進められるといいですよね。

 

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「This Is Me!」に感動、アレルギーと多様性

今日は、最近感動した曲、多様性、食べる場所の「アレルギー的」バリアフリー化について書きたいと思います。

目次

1. ストレッチで、よい曲がかかった!

体調が落ち着いてきた3か月前から、ストレス解消も兼ね、ダンスのクラスを受けています。たまたま、最後のストレッチの時に「This Is Me!」という曲がかかり、感動してちょっと泣きそうになりました。

2017年公開の「The Greatest Showman」(実話を基にしたミュージカル映画)の中で歌われた曲で、ゴールデングローブ賞主題歌賞を受賞、アカデミー賞主題歌賞にもノミネートされました。 

アレルギーになって、何だか肩身が狭く感じていた私の心を、解放してくれる曲でした。

youtu.be

映画のオフィシャルビデオはこちら。

youtu.be

良い曲でしょう!元気が出ますよね。

2. 自分の変化、多様性って?

アレルギーになって、大変な事も多いですが、よかったと思えることもたまにあります。以前は「多様性」と言われても、心の底では他人ごとだと思っていたと思います。アレルギーになってやっと、その意味が分かり始めた気がします。 自分が経験していない事でも、想像したり思いやる気持ちも、少しづつ育ってきている気がします。

3. 「食べる場所」のバリアフリー化

a. 「食べられる場所がない」問題

多様性に関連して、食アレの人が外で食べようとすると、大きな目に見えない「バリア」が立ちはだかっているんですよね。

外食できるお店が少ないだけではなく、食物の持ち込みOKの場所も少ないのです。発症前のように外食したり、好きな食物を購入できないのは、もう仕方ない。でも、持参した食物を食べられる場所が少ないのは残念です。食物と場所、両方の確保が必要で、成人として社会生活を続けていく上でバリアがあると感じます。

例えば、先月の3か月に1度の通院の時は、こんな感じでした。
午後2時の診察予約。正午頃、用事を終わらせ、出先から直接病院へ向かう。お弁当はもちろん携帯。最寄り駅で降りて、病院へ向かう途中、雨がぽつぽつ。あ~、いつもの公園で、食べてから病院に向かおうと思っていたのだけど・・・。途中の商店街で食べられる飲食店はない、病院内にも持参弁当を食べられる場所はない。仕方ない、雨だけど公園で食べてから行こう。通行人にじろっと見られながら、立ったまま片手に傘とお箸、片手にお弁当、さっと食べて病院へ。ちょっとみじめな感じ。。雨の日は、駅のホームのベンチで食べるようなことも、時々あります。出張が頻繁にある方は、きっと苦労されているだろうなと思います。

もう一つ、食事制限のある人とない人が外出した際、一緒に食べられないことがあるのも残念です。
例えば、家族でショッピングに出かけて、お腹がすいてフードコートで何か食べようとなる。でも、持ち込みNGの場所も多い。「私は屋外のベンチで持参弁当を食べてくるから、好きなものフードコートで食べて」。せっかく一緒に来たのにね・・・

自宅以外で飲食する場合、日本では「食事の販売・提供」と「飲食する場所」が一体化していて、その結果「購入した商品以外持ち込みお断り」の場所が多いのだと思います。公共性の高い場では、そのような場所を「購入飲食、持ち込み飲食、飲食なしで休憩だけでも全部OKな場所」に変えられたら、各自のニーズに合ったくつろげる場所になると思います。

b.  持ち込みOKの良い例

食物アレルギーの視点ですごく助かるなという、よい例もあります。高速道路のサービスエリアのカフェテリアや、道の駅のイートインスペースは、持ち込みOKの場所も多いですよね。また、最近行ったコンサートホールでは、休憩スペースが持ち込みOKで、お腹がグーっとなることなく音楽に集中できました。一般の方も長時間のコンサートの前や合間に軽食が必要ですものね。

以前通っていた病院では、食事の販売はない、場所のみ提供のカフェテリアがありました。普通にコンビニで食事を買ってきて食べる人もいれば、食事制限のある患者さん(例 腎臓病、糖尿病、高血圧等)や、小さなお子さんのいる家族が家から持ってきた食事を食べることも出来る。電子レンジ、手を洗う場所、テーブルの上に使い捨て除菌シート等も設置されていて、便利でした。診察直前になるとアプリで通知が来るので、混んでいる待合室でなく、カフェテリアでゆっくり過ごすこともできました。大きな病院は半日以上かかること多いですよね。

c. 食アレの多様性、食品レベル vs. 場所レベル

「食物アレルギーの人でも食べられる食品」が増えて、患者さんの選択肢が広くなるのはとても良いことだと思います。ただ、食物アレルギー自体も多様性があり「ある人が食べられる食品は、他の人は食べられないかもしれない」ということもあります。そして、多様な食物アレルギーに個々の「食品レベル」で対応するには限界がありますよね。

違った視点から、各自が自分に合った食物を持ち込んで食べられる「場所」を増やす、「場所レベル」の自由度を上げる方法もあると思います。

まずは、公共性が高く、滞在時間が長めのショッピングセンターや駅ビル、大きな病院、ホールなどから試験的に、持ち込み飲食も休憩もOKという、少し自由に使える場所を増やしてみてはどうかと思います。衛生上やスペースの問題など、制約があると思いますが、雨がしのげる所に簡易的なテーブルや椅子を設置してみる、という所からスタートしてみてもいいと思います。

食物アレルギーの患者さんだけでなく、他の病気で食事制限のある方、高齢者、小さなお子さんのいる家族など、多くの人が助かると思います。

そして、食物アレルギーの同胞も皆様。「This Is Me!」で、アレルギーも個性の一つの形、頑張りましょうね!

 

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お薬の話 抗ヒスタミン薬変更で、一石三鳥

今日は、「お薬」についてのエピソードを書きます。人によって「合う、合わない」があること、変更したらよかったこと、花粉症の治療で使われる抗ヒスタミン薬についても、少し書きます。

目次

1. 薬の処方状況

食物アレルギーの患者さんの中には、症状が落ち着けば、お薬は不要で除去だけで大丈夫な方も多いかと思います。私の場合は、喘息と慢性蕁麻疹(血管性浮腫)を併発し、いろいろな食物に反応が出てしまうため、お薬はずっと継続しています。現在は、喘息薬、抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬の3つ。3か月毎のお薬代は3割負担で約1万円、結構高いです。参考までに処方履歴です。

  • 2023年3月 ルパフィン(抗ヒスタミン薬)、モンテルカスト(抗ロイコトリエン薬)、トラネキサム酸
  • 5月 ルパフィン倍量(症状悪化)
  • 7月 ゾレア1回目
  • 8月 ゾレア2回目(反応出て中止)
  • 9月 転院・診断後、テリルジー100 (喘息用吸入薬)、エピペン、ルパフィン倍量、モンテルカスト、トラネキサム酸、デサレックス(頓服)
  • 2024年3月 症状改善で減薬。ルパフィン通常量に、トラネキサム酸中止。テリルジー100、モンテルカスト継続。
  • 5月 ルパフィンをクラリチンに変更

2. あれ、飲んだっけ?

長期間、薬を使うのは初めて。吸ったり、飲んだり、時間帯が違ったりと、慣れるまで少し時間がかかりました。「しまった、朝に喘息薬を吸入するのを忘れて外出してしまった」とか、「寝る前にルパフィン飲まずに寝ちゃった。朝飲むと眠いから、夜まで待って飲もう」など、最初は失敗も。今はAlexaでリマインダーを設定して、「薬!」と毎日言ってもらって助かっています。

高齢者やご家族が、「たくさんの薬を飲んだり管理するのが大変」という気持ちが初めて分かりました。薬が少なくても「あれ、今日、飲んだっけ?」ということがよくあります。

3. 初めての吸入薬

私の使っている喘息薬はステロイドが入っているので、吸入後、口をよくゆすぐ必要があります。そして、長時間作用性β2刺激剤というのも入っていて、最初は吸入直後にかなり動悸がしました。1日1回の吸入を朝食後にして、「朝食ー>吸入ー>歯磨きー>ウォーキング」を朝のルーチンにしました。歯を磨く時に口をゆすぐし、ウォーキングすれば、動悸も感じにくくなる。3か月過ぎた頃から、吸入後の動悸も感じなくなりました。

4. ルパフィンの眠気

ルパフィンは第二世代の抗ヒスタミン薬なのですが、眠気の副作用が出る場合は結構あるようです(添付文書には9.3%と記載)。私も眠気・だるさが強く出る体質だったようで、特に倍量を飲んでいた頃はすごかったです。

最初は夕食後に飲んでいたのですが、「眠くてお風呂に入れない、もう寝る」とか、スマホを見ながら寝落ち(普段はうたた寝しないタイプです)。「睡眠薬飲んだことはないけど、睡眠薬みたい」と思っていました。朝はすっきり起きるタイプなのですが、いつも寝起きも悪く、午前中、頭がぼーっとだるい感じでした。「子供の頃に飲んだ、第一世代の抗ヒスタミン薬みたい」と思っていました。

5. グレープフルーツNG問題

循環器・血圧のお薬で、グレープフルーツがNGなお薬はたまにありますよね。抗ヒスタミン薬では珍しいのですが、私の服用していたルパフィンはグレープフルーツはNGだったのです。

そして、私が一番好きな食べ物は苦みのある柑橘類なのです。5月のフロリダ産のグレープフルーツや、梅雨から初夏にかけての瑞々しい愛媛産の河内晩柑など、気持ちもさっぱりさせてくれる、大好きな食べ物です。ピンクのグレープフルーツジュースもかわいい色で、よく飲んでいました。

「魚介・鶏・豚全部食べられなくても、苦い柑橘が食べられるならいい」と思っていたのですが、お薬の飲み合わせでNGに。「また食べられない物が増えた・・・」と残念でした。

アニサキスアレルギーの方には「魚介愛」が強い方が多いのですが、私はそこまでの「魚介愛」はなく、「柑橘愛」の方が強かったようです。

6. ルパフィンが花粉症に効かなかった

私の処方されていたルパフィンは、ヒスタミンだけでなく、血小板活性化因子(PAF)を抑える効果があるとされ、日本では2017年に発売された比較的新しいお薬です。私は腫れてしまう症状があるので、ダブル効果を期待できるルパフィンを処方して頂いたのかな?と思います。目の症状が強い花粉症にもよく処方されるようです。
発症前は、花粉症の時期に20年近くアレグラ(フェキソフェナジン)かクラリチンを飲んでいて、ぴたっと効いていました。

発症後の花粉症の時期、ルパフィンを飲んでいるのに、夜中にくしゃみ・鼻水で寝られないほど花粉症がひどい。試しにルパフィンをやめて、以前飲んでいたフェキソフェナジンを飲んだ所、ぴたーっと効いて症状は出なくなった。そんなこともあり、ルパフィンから他の抗ヒスタミン薬に変えて頂けないか、医師に相談することにしました。

7. クラリチンに変更、合ってた

結果的にルパフィンからクラリチンに変更して頂き、大変好調です。眠気もなくなり、朝もすっきり。薬の影響が他の要因か不明ですが、薬の変更後24日目から、ピークフローが突然100%近くまでドンっと上昇、息苦しさもなくなりました。そして、苦い柑橘やグレープフルーツも食べられる。1年半我慢しないで、早く変えて頂けばよかった~。

8. 振り返っての感想

a. 抗ヒスタミン薬もいろいろ

抗ヒスタミン薬も様々で、その人に合う、合わないがあるんだな、と思いました。花粉症で抗ヒスタミン薬を使われている一般の方でも、今飲んでいる薬の効き目が今一つとか、眠気や自動車運転の問題がある場合、薬剤師・医師にご相談されるといいと思います。服用回数・タイミングも薬によって様々で、例えば、食事の影響で薬の吸収が下がるお薬は、空腹時に服用する必要があります(例 ビラノア)。食後・空腹時、どちらでもOKのお薬もあります。

また、妊娠の可能性有・妊娠中でも比較的安心して服用できる抗ヒスタミン薬もあるので、医師にご相談されるといいと思います。ちなみに、私の飲んでいたルパフィンは、妊娠・授乳中の方には向かないお薬です。また、添付文書に次のような記載があり、女性の患者さんの長期服用に影響ないのだろうか、と素人的には思いました。
「非臨床試験に基づく情報。幼若雌性ラットにルパタジンを4週間反復経口投与した実験で、本薬の薬理作用に起因すると考えられる卵巣重量減少、性周期延長(発情間期延長)等が認められた」

b. 「慢性蕁麻疹は原因不明が70%」、ホント?

当初、特発性血管性浮腫(慢性蕁麻疹の一種)と言われていた時、原因不明のまま、対処的に抗ヒスタミン薬を倍量処方されていました。抗ヒスタミン薬によって、症状が緩和されるというメリットと、何にどう反応が出ているか分かりにくくなるというデメリットの両方あったのでは?と、素人的には思います。

アニサキスや食物でアレルギー反応が出ても、薬で抑えられ、重度のアナフィラキシーにはならずに済んだ。でも、結果的に中途半端な軽度のアナフィラキシーが継続、原因究明や治療を遅らせた可能性もあるかもしれない。

慢性蕁麻疹では、最初に抗ヒスタミン薬を処方されることが多いようです。原因究明がしっかり行われた後で原因不明であれば、対処療法しかない。でも、特発性ありきで原因究明が不十分な場合、対処療法によって、更に根本原因を見つけにくくなり、症状を慢性化させてしまう可能性もあるのでは?と思いました。

「慢性蕁麻疹の70%は原因不明」と言われていますが、本当かな?と思います。70%はあまりにも高すぎるというのが、私の素人的印象で、自分で食物日誌や体調のデータを記録し始めたきっかけの一つでした。

医療とビジネスでは違う部分も多いと思いますが、仕事で問題が起こって「70%が原因不明なので根本的な改善策は打てません!」と言ったら、「もう一回データを見直して、バイアスなく原因を調べて、いろいろな人からアドバイスしてもらって、改善策を考えなさい!」と上司に怒られると思います。

診断精度が原因で、原因不明の慢性蕁麻疹と診断されている場合、原因を特定して除去すれば、症状は改善し、患者さんは長期間苦しまずに済む。診断精度を上げるためには何が必要なのか、今の医療で何がボトルネックなのか、素人的には興味が沸きました。
例えば、医師の診察時間の制限が問題ならば、患者さんに事前にスマホ経由でAIや診断プログラムに必要な情報を入力してもらって、疑わしい原因を浮上させたうえで、診察時間中に、効率的に原因究明できる仕組みで補助するとか・・・そういう仕組みがあれば、アレルギー専門医でない医師がアレルギーを診察する場合や、医師が少ない地域での遠隔診断などにも、役立ちそうですよね。そもそも、もう紙の問診票の時代ではないし・・・

c. フロリダプチ情報

とにかく、抗ヒスタミン薬を変えて頂き、一石三鳥。眠気なし、グレープフルーツもOK、呼吸も改善、大変ハッピーです。

お薬を継続的に使われている方で、気になる点がある方は、我慢せずに医師や薬剤師の方に相談されてみて下さいね。

そして、ゴールデンウィークにフロリダのディズニーワールド等にお出かけされる方、ぜひ現地で取れたての旬のグレープフルーツを味わってみて下さい。農園の前やガソリンスタンドなどで売られていて、とてもジューシーです。でも、ワニにはお気をつけ下さい。水辺に近い公園を散歩中、人や犬がワニに食べられたりします(がぶっ、本当です)。 いつも、長文を読んで頂き有難うございます。

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アニサキスアレルギー 食事・生活上注意点(完全除去ケース 参考例)

今日は、アニサキスアレルギーの診断直後の患者さんに向けて、書きたいと思います。SNS等を拝見すると、診断直後「何を除去したらいいの?」と戸惑う方がとても多いです。私も同じだったので、食事や生活上の注意点について、私なりにまとめてみました。

素人が作成したリストなので、不備もあったり、除去範囲も人それぞれかと思います。ご自身の症状に応じて、主治医の先生と具体的な除去の相談をする出発点として使って頂き、最終的にはご自身に合うリストを作って頂ければと思います。

目次

1. 食事上の注意点

a. 魚介類の除去

  • 生・加熱後、淡水魚・海水魚、養殖・天然等の区別なく全て
  • 議論が分かれる所なので、主治医の先生とご相談下さい

b. 魚介由来の原材料・添加物表示のある食品の除去 

  • 魚介だし・エキス、魚醤パウダー、魚油、魚肉すり身、加水蛋白分解物、調味料(アミノ酸)の表示がある食物は、除去した方がよい
  • 一見、魚介系の材料・添加物が使われているようにみえない食物に注意

c. 具体例( 調味料)

除去した方がよい原材料・添加物を含む可能性が高いもの。全商品がNGではないので、個々の商品の表示を確認して決めて下さい。

  • 「だし」系:かつおだし、だし入り味噌、卵かけご飯用醤油
  • 「たれ」系:納豆・焼き肉のたれ、ポン酢
  • 「つゆ」系:そば・うどんのつゆ、ラーメン・鍋のつゆ
  • 「かける」系:味付け塩コショウ、鰹節、ふりかけ、お茶漬け、ソース(お好み焼きソース、アンチョビソース含)、ドレッシング
  • 「簡単調理」系:カレールー、麻婆豆腐の素、パスタソース
  • 「アジア」系:ナンプラー、ニョクマム、オイスターソース、豆板醤

d. 具体例(調味料以外)

  • 「簡単調理」系:冷凍炒飯・餃子、冷蔵ハンバーグ、カップ麺、レトルトカレー、粉状のコーンスープ、お好み焼き粉、冷蔵の蒸麺、味付け肉
  • 「菓子」系:ポテトチップス等のスナック菓子、煎餅
  • 「魚肉」系:伊達巻、かまぼこ、ちくわ、はんぺん、魚肉ソーセージ
  • 「漬物」系:キムチ、たくあん、白菜浅漬け、かつお梅
  • その他:魚成分が入っているサプリ

2. 生活上の注意点・アドバイス

  • 体重を測定し、食事変化によって大きな増減にならないよう管理する
  • 調理の際、除去食物に素手で触らない、煮炊きの湯気・煙にも気を付ける
  • 海水浴は避けた方がいい
  • 食べられる物を携帯して外出すると便利
  • 旅行やアルコール飲食時に、気が緩んで食べてしまわないよう気を付ける
  • エピペンを処方されている場合は必ず携帯、使用期限にも注意
  • 家族・友人・同僚にアレルギーを理解してもらい、除去しやすい環境を作る(会食など)。エピペンの置いてある場所・使い方も説明しておく。
  • 趣味などでストレスを発散し、心身を健康に保つ

3. まとめ

診断後に、医療機関から患者さんに、こういう情報を、1枚の紙でもいいので提供してもらえると有難いと思います。患者さんが、除去すべき食物、注意すべきことを具体的にイメージでき、アレルギーと共存の新しい生活を始めやすいかと思います。私のような素人が作ったリストでなく、医療関係者の方々に作成して頂いて、困っている患者さんに届けて頂けたら幸いです。

さて、アニサキスの除去は「魚介と関係あるの?」と思うような食品も入っていて、驚かれた方も多いのではと思います。日本の「うまみ」「だし」文化の中では、アニサキスの除去は結構大変です。

原因タンパク質についての研究も進められており、将来的にはもう少し除去の範囲を絞れる可能性もありそうです。

私は完全除去が必要ですが、症状は人それぞれなので、自分にあった治療・除去計画を医師と相談して下さいね。

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事件簿 ④ 食べなくても危なかった事件

除去生活中のハプニングをお伝えする、事件簿シリーズ。今日は「食べなければいいんだ」と思っていたら、大間違いだったことについて書きます。

前半は調理中の素手での接触や湯気・煙の吸い込みの危険について、後半は、家庭でアレルギーのある食品を他の家族のために調理する方へのアドバイス、そして医療関係者の方々へのお願いを書きます。

目次

1. 発端

アレルギー発症後、外食もできなくなり、家族の食事にも大きな影響が出ました。「私のせいで申し訳ないなぁ」「家では好きな物を食べてもらいたい」と思い、自分用の除去食と家族用の普通食を、できる範囲で作っていました。

なので、診断後も発症前と変わらず、魚を買ってきて、素手で内臓を取って焼き魚を作ったり、豚・鶏肉も素手で触って包丁で切ったり、圧力鍋で煮込んだり、数時間オーブンで焼いたり。

ギョーザコンタミ事件以降は、除去食とコンタミしないように気を付けていました。鍋やまな板をしっかり目に洗う、お箸や皿を別にするなど。でも、手袋は面倒で、魚介・肉のエキスがしっかりついた鍋、鉄板、まな板等を、素手で洗っていました。

 

kozakura5.hatenablog.com

a. 手が真っ赤に腫れる

当時、よく左手が水風船のようにぱんぱんに腫れました。左手の結婚指輪は、除去開始から1年はつけられず、時計も左から右手首に移動しました。

安全な食物しか食べていないのに、手が腫れる。やっぱり、アレルギーのせいだけでなく特発性(原因不明)の血管性浮腫もあって、腫れてるのかな?と思っていました。

b. コンロ・オーブンの前で息苦しくなる

そして、台所のコンロやオーブンの前で長時間調理すると、喉が腫れたり、胸が息苦しくなり、「なんだか、台所にいると息苦しくて、喉も腫れる」「隣のリビングで少し休んでくる」ということが、何度も起きていました。

ネットで調べると、喘息は温度変化も発作の原因になると書いてある。そのせいなのかな? でも、なぜか台所だけで起こる。暑い日に、玄関から外に出た時、2階の暑い部屋に行っても、具合は悪くならない。家族と「不思議だね~」と話していました。

2. 原因究明

a. 経皮感作

除去開始から数か月後、アニサキスの方々のSNSを見ていた所、和食の調理師の方が、コロナ後に魚を捌く機会が増えたら、アレルギー症状が悪化したという投稿が。「えっ、ちょっと待って、触るのもダメだったの? 毎日、めっちゃ触ってるんだけど」。ネット検索すると「経皮感作」が出てきた!

経皮感作:アレルギーの原因物質が、皮膚のバリアを通過して、表皮や真皮に侵入。免疫細胞と反応して感作が起こり、食物アレルギーが進行することもあると書いてありました。更に、「経皮」と「経口(食べる)」によるアレルゲンへの暴露では、「経皮」の方が食物アレルギーになるリスクが高まるという記述も。

この時の気持ちです。「ショックだ、誰も教えてくれなかった。こういう大切な治療のための情報を、なんで自分でネット検索しないと情報を得られないの?」😡😡😡

推測の域ですが、左手が多く腫れていたのは、私は利き手が右手で、右手で包丁を握り、左手で魚介・肉類を素手で触っていることが多かったからかもしれません。または、特発性で、理由なく左手ばかり腫れていたのかもしれません。

b.煮炊きの湯気や煙の吸い込み

除去開始後11か月後、アレルギーについてのあるYouTubeを見ていたら、職業上、煮炊きの湯気・煙を吸ってアナフィラキシーを発症された方の事例が紹介されていました。

またまた衝撃!「えっ、また? 触るだけでなく、今度は、煮炊きの湯気や煙もだめだったの? 」。早速、ネットで検索してみることに。

すると、そば・うどん屋さんが、麺をゆでる湯気でアナフィラキシー、小麦アレルギーの診断になった例や、卵アレルギーのお子さんが、ゆで卵の調理実習中、湯気で気分が悪くなった例など出てきました。

その日の家族と会話です。

私:「焼き魚したり、豚・鶏を圧力鍋で煮たり、オーブンで焼いていると、よく具合悪くなるでしょ。調理中にアレルギー物質を吸ってるからかも。どう思う?」

家族:「えっ。。。湯気とか煙も危ないなんて、想像できなかった。これからは、調理の時はよく換気しよう。魚介・豚・鶏は、自分ができるだけ調理するようにするから」

私:「味見ができなくなっただけでなく、調理もごめんね」

この時の私の気持ちです。「約1年間、食物の除去を頑張ってきた。それなのに、後出しジャンケン方式で、治療に大切な情報が次々と出てくる。それも自分でネット検索しなければ、一生知らなかったかも。最初にきちんと、注意事項を言って欲しかった」😡

調理時の湯気や煙が、調理時の私の喉の腫れや息苦しさの原因だったか、確証はありません。でも、気をつけるようになってから、一度も台所での調理中に、息苦しさや喉の腫れは出ていません。全体的に症状が改善していった時期だったので、湯気や煙とは直接関係なかった可能性もありえます。

3. その後

食物の除去、経皮接触、調理中の湯気や煙に気を付けて、除去開始後1年経った頃、手の腫れは全く出なくなりました。結婚指輪も、1年ぶりに無事に左手に戻りました、イェ~イ!

指も動かしやすくなり、PCのキーボードも不自由なく打てるようになったり、自転車のブレーキも普通に握る事が出来るようになりました。たかが手の腫れと思われるかもしれませんが、不便な事が多かったです。

手がよく乾燥していたので、今まで面倒で使っていなかった、保湿剤やハンドクリームもよく塗るようにしています。手以外の体の乾燥している部分にも、入浴後保湿し始めました。

台所で調理中の息苦しさ・喉の腫れも、その後一度も起こっていません。月に4-5回、SpO2が88-95%になる問題もなくなり、今は常に98-100%です!

4. 患者さんへのプチアドバイス

食物・食物関連アレルギーの同胞の皆様へ。家族のために、アレルギーのある食品を調理しなければならない場合の、プチアドバイスです。

a. 手袋の利用

使い捨て手袋・洗い物用の手袋を、便利な場所に設置。アレルギーのある食品を触る時、洗い物をする時などに、直接肌に触れないよう面倒だけどつけてね! ラテックスアレルギーがある方は、手袋の素材にもご注意を。

b. 処理サービスや処理済み商品を利用する

経皮接触を防ぎ、調理の時短も達成できる、一石二鳥の便利なサービスや商品がないか探してみて下さい。例えば、

魚介:スーパーで無料で魚を捌いてくれるサービスを使う、冷凍のエビ・ボイルアサリ・シーフード(触らずそのまま使える)

鶏・豚肉:既に小さく切っている商品(例 唐揚げ用、こまぎれ)

c. 経皮バリアにも注意

皮膚のバリア機能を保つため、保湿は大事。食物アレルギー発症を機に、逆に「肌がしっとり、きれいになったね」と言われるようお手入れしましょう。私は最近1人のお友達から褒められました! 保湿剤でアレルギーが出る場合もあるので、アレルギーが出にくい商品がおすすめです。

c. 調理中の湯気・煙・吸い込みに注意

心配な方は、ご自身の症状の場合、どの程度なら大丈夫か、医師に相談してみて下さい。特に制限がない場合も、換気と、長時間調理しないよう、お気を付け下さい。私のように、アレルギー食品の長時間調理は、家族にお願いしてしまうのも代替策かと思います(ごめんね、my家族)。

調理する方にアレルギーはなし、ご家族にアレルギーがある場合、症状や家の構造によっては(例 リビングキッチン一体型)、アレルギーのある食品を調理する際、アレルギーのある方に調理中は他の部屋・離れた場所にいてもらう、換気に気を付ける等、必要な場合もあるかもしれません。

5. 医療関係者の方々へのお願い

食物・食物関連アレルギーの治療に携わる医療関係者の方々に、お願いがあります。
コロナの影響で家庭での調理が増えたのに加え、食物アレルギーの診断後、家で調理・食事する回数が増える患者さんも多いと思われます。

特定の職業(飲食・食品加工・調理等)や趣味に関係のない、一般の成人の食物アレルギーの患者さんでも、家庭での調理で経皮暴露、煮炊きの湯気・煙の吸い込み等が起こる可能性は十分あると思います。

症状が重い患者さんには特に、診断時に、食物除去の指導だけでなく、生活上の注意点として、調理の際の経皮接触や湯気・煙の吸い込みについても注意喚起して頂くことをご検討頂ければ幸いです。

 

もう少し事件簿シリーズを続け、その後は新シリーズを検討中です。食物アレルギーの患者さんの環境を少しでもよくできればと、今後も「魂」を込めてブログを書き続けます。引き続き、応援宜しくお願いします。

 

 

 

 

 

事件簿 ③ マスタード事件

除去生活中のハプニングをお伝えする、事件簿シリーズ。今日は、マスタード事件です。前半は反応が出た時のこと、後半はマスタードアレルギーについて、海外情報も入れながら書きたいと思います。

目次

1. 発端

シンプルな調味料、食材に飽きた

除去開始後8か月後、食生活も安定した頃、シンプルな調味料のみの味付けに飽きた〜。 アニサキスアレルギーの人は特に、使える調味料が限られてしまうのです。私のメイン調味料は、塩、胡椒、醤油、レモン汁、植物油。頑張っていたのですが、さすがに飽きました。

食材も私は魚介・鶏・豚がNGで、「もう牛もも肉は食べたくない」「さっぱりしたものが食べたい」と、食欲が沸かなくなりました。

「味と食材に飽きた」と不満が出るほど、この頃には炎症も沈静化してきていたのだと思います。以前は「安全な食物なら、何の不満もなく食べます」という感じでした。不満や葛藤は、元気になってきていた証拠でした。

輸入食料品で安売り

除去開始後、新しい食料品店と食材を新規開拓するため、輸入食品店にも時々立ち寄るようになりました(カルディみたいな所です)。

アニサキスアレルギーの人は、和系・中華系・アジア系はNGな物が多いのですが、ダシ・うまみの添加物が入っていない、欧米系の食物で大丈夫な時があります。例えば、国産のポテトチップスはNGの場合が多いのですが、アメリカのポテトチップス代表格的な商品は、OKだったりします。アメリカでは、味がシンプルな方が飽きがこなく、長期間多くの人から愛されるからでしょうね。

sj-kobe.net

(注意:上記製品、私は大丈夫ですが、製造過程のコンタミ情報は未確認なので、微量でも反応する方はお気を付け下さい)

小麦・グルテン・乳・卵のアレルギーの方は、洋系より和系スイーツの方が食べられる物が多そうで、似たような感じなのかなと思います。

そんな訳で、輸入食料品店に立ち寄った時に、100円で安売りされている業務用ディジョンマスタードを発見。「こんなにたくさんはいらないけど、フランス産で原材料は大丈夫そう。安いし、味が変わって食欲が沸くかも」と購入。これが事件の発端となりました。

2. 事件発生

フレンチドレッシング作り

除去開始時にドレッシングは全て廃棄。久しぶりに、ドレッシングをサラダにかけて食べたいなあと思い、自分で作ることに。

購入したディジョンマスタード、オリーブ油、レモン汁、穀物酢を混ぜ、フレンチドレッシングを作りました。 

このドレッシングはさっぱりとして、サラダにも肉にも合うので、アレルギーの心配がない方には、おすすめです。

テスト失敗

ドレッシング数滴を1週間試して大丈夫そう。その後、小さじ約2杯(底に沈殿していたので、マスタード濃度濃いめ)を夕飯に使用。

その晩、顔と腕がちくちく。朝起きると、左の頬・目・喉・足指が腫れ(血管性浮腫)、腹痛、下痢、声がれと続きました。

症状1週間継続

私の場合、症状が出てしまうと、その後1週間位、あちこちが腫れたり、引っ込んだり、不調が続きます。この時も、腹痛や下痢、膨満感、声がれ、喉の腫れが1週間程続きましたが、血圧や呼吸は大丈夫でした。

3. 原因究明

症状が出た朝の家族との会話

私:「久しぶりに腫れて、症状出ちゃった」
家族:「昨日、何か当たっちゃうもの食べたっけ?」
私:「マスタードのドレッシング、量増やしたんだよね。それ以外は何も」
家族:「じゃあ、マスタードかね。でもマスタードでアレルギーなんて出るのかな? 聞いたことないよね」
私:「そうだよね。とにかく、作ったドレッシングはもうやめとく」

兆候はテスト時に出ていた
よくよく思い起こせば、ドレッシング数滴をテストしていた時、鼻先だけちくちくしていたんですよね。新しい花粉症?と思ってました。

いつもは鼻から口まで広い範囲がちくちく、耳の奥もむずむず、手足の甲もちくちく。数滴テストしていた時は、鼻先だけだったので、甘く見ていました。

原因物質絞り込み

  • ドレッシングに入っていたもの:マスタード(マスタード種子、食酢、食塩、亜硫酸塩、ph調整剤)、オリーブオイル、胡椒、レモン汁、穀物酢(米、アルコール、酒かす)
  • マスタード種子と亜硫酸塩以外は、大丈夫そう。どちらかな?
  • 3か月に1度の診察時に医師へ報告

マスタードの抗体検査はしなかったので、根拠をもってマスタード種子が原因とは言い切れませんが、食べて症状が出たので、瓶入りマスタードは除去することに

4. マスタードアレルギーについて調べてみた

「マスタードなんかでアレルギーが出るんだろうか?」と興味が沸き、ネットで調べてみたら、衝撃でした。マスタードアレルギーは、海外ではよく起こる食物アレルギーだったのです。

マスタードについて

  • マスタードはアブラナ科。口腔アレルギー症候群(OAS)、花粉・食物アレルギー症候群(PFS/PFAS)の原因物質の1つとされ、カバノキ科花粉などとの交差反応性があるとされる。
  • マスタードの種類:黒、茶、黄、白、オリエンタル。白・黄は辛さ弱め、黒・茶は辛さ強め。
  • 瓶詰め黄マスタードは、黄(Sin a1)とオリエンタル(Bra j1)の種子が主原料。アレルギーの主原因は黄マスタードに含まれるSin a1(酵素・熱の影響を受けない)。
  • 欧米でよく使用されている食品例:ドレッシング、マヨネーズ、バーベキューソース、ケチャップ、ホットドックソース、シーズニング、スープ、ピクルス、ハムなどの加工品、スナック菓子、離乳食、インド・ロシア料理 

海外でのマスタード表示義務事情

EU/UKでは表示義務

マスタードの生産・消費が盛んなフランスやスペインでは、マスタードアレルギーが深刻な問題のようです(私の食べたディジョンマスタードもフランス産)。EUで表示義務がある14のアレルゲンに、マスタードが入っていました。イギリスも同様でした。

farrp.unl.edu

カナダでも表示義務

カナダでも、(優先度の高い)食物アレルギーの11の原因にマスタードが入っており、表示義務あり。

www.canada.ca

アメリカでは表示義務はなし

アメリカで表示義務がある、9つの主要な食品アレルギーに、マスタードは入っていませんでした。

www.fda.gov

アメリカのグルテンフリー、セリアック病

話はそれますが、グルテンとセリアック病について、一口メモです。
アメリカではセリアック病が深刻な問題となり、2013年に食品アレルギー表示および消費者保護法に基づいてグルテンフリーの表示規則が、2020年には発酵・加水分解物およびそれを含む食品に関するグルテンフリーの表示規則が施行され、追加的に補完されている形かと思います。

私の30年来の親しいアメリカ人の友人も、数年前セリアック病の診断を受けました。セリアック病は不耐性でアレルギーではないのですが、除去が必要なのは全く同じなので、お互いに慰め合っています。

5. 振り返って感想

成人特有の食物アレルギーの大変さ

事件の発端になった、除去食への不満はどうして起こっているのか、自分なりに考えてみました。
小児の食物アレルギーと比較した時、成人の食物アレルギーに特有な大変さの1つは、何十年も慣れ親しんで習慣となった食生活・味覚を、ある日、突然変えなければいけない事だと思います。 自分の好きな食物、味付け、そのバラエティや組み合わせ、外食の楽しさ、食事と密接結びついた人との交流等、生まれてから何十年もかけて築き上げてきた、自分固有の食事文化が既に存在する。アレルギーの発症を機に、突然その文化を変えなくてはいけなくなる。その変え方を教えてくれる場所もほぼない(栄養指導も保険適用外)。食物アレルギーの場合、発症前と変わらず元気なことが多い。でも、毎日の食事は以前のようにはいかない。場合によっては、毒となり自分の命を脅かしかねない。そこに葛藤が生まれて大変なんだな、と思いました。

少しづつテストする方法はよかった

昨年発症して以来、安全か不明な物は、全て少量から、加熱できるものは加熱して試し、徐々に普通量に増やしていくという方法を取っていて、それは良かった。今回も、最初にたっぷりマスタードを使っていたら、いきなり呼吸困難になっていたかもしれません。

注意:私の場合は、3か月1度の診察で頻繁に相談できない環境なので、自分でテストせざるを得ないのでこの方法を取っています。症状や環境はそれぞれ違い、必ずしも私の方法がベストではないので、医師と相談されて下さいね。

でも、テストする前に調べるべきだった

多くの食物に反応しやすい体質にも関わらず、多数の国で表示義務があるようなハイリスク食材をたまたま選んでテストしてしまい、事前にもっと調べるべきだったと反省しました。本事件からの学び。安売りに惑わされるなかれ、アレルギーは心の隙間に要注意、ですね。

日本でもマスタード、ちょっと心配

最近、日本でもハニーマスタードソース、ドレッシングなど、マスタードを使う食品・お店が増えてきましたよね。マスタードにアレルギー反応が出る方がいないといいなと、少し気がかりです。また、花粉症・交差反応の件も、ちょっと心配です。

そして冷蔵庫で場所を取っている、大量のマスタード、どうしようか。いつもお読み頂き有難うございます。

事件簿 ② 左胸救出事件

2023年は、私にとって「アレルギー元年」だっただけでなく、実は別の病気でも手術入院するという、ちょっと大変な年でした。

今日は、その時のエピソードを書きたいと思います。食物アレルギー・喘息・慢性蕁麻疹があり、手術をするってどんな感じか、入院食や薬、医師との信頼関係について、お伝えできればと思います。

目次

 

1. 別の病気の状況

4年前から左胸にしこりがあり、線維腺腫疑いで経過観察中。タイミングの悪いことに、アレルギーの発症と同時期に5cm x 5cmまで急成長。手術可能な大きな病院の乳腺外科に紹介されました。

良性の葉状腫瘍だと思われるが、手術は必要。問題はいつ手術するかでした。

当時、最初の大学病院で特発性血管性浮腫と言われていた時期で、原因不明の腫れ・SpO2と血圧の低下がある状態で、良性腫瘍の切除のメリットと手術のリスクを鑑みると延期した方がいいということになり、3か月様子を見ることに。

がんの可能性は低いと言われていましたが、腫瘍が皮膚の上からも見て分かる位成長していたので、手術延期に少しやきもきしました。母も乳がんだったし。葉状腫瘍は1-2cmマージンを取って切除するのが教科書的には基本。腫瘍は既に5cm四方、このまま成長が続けば、左胸全部なくなるかもと思っていました。

最初の大学病院で、ゾレアに反応が出て中止になった時に、「もたもたしていられない。何だか分からないこの病気を、早く治さないと左胸も危ない」と焦せる気持ちで、転院に踏み切りました。

2023年9月末に、転院先の大学病院でアニサキスアレルギー・喘息・慢性蕁麻疹の診断・治療開始、12月初旬には症状沈静化。そのお陰で、12月末に乳腺の手術を無事受けられることになりました。

2. 入院日程

全身麻酔の手術でしたが、1泊2日の高速、院内滞在時間は24時間を切っていたと思います。手術当日に入院手続きを済ませ、午後に手術を受け、一晩寝て、翌朝9時には問題なく退院。

3. 入院食

a. アニサキス対応可能?

入院前の看護師さんからの説明時に、入院食のアレルギー対応についてお聞きした所、院内の管理栄養士さんに問い合わせてくれました。

私は「調味料やだし入りの味噌汁もだめなので、白米・牛乳・生野菜・豆腐とかのメニューでもいいので、お願いできないでしょうか?」お聞きしました。

結局、アニサキスアレルギー対応の経験がなく難しい、入院食でアレルギーを起こすリスクを考えたら、家から食事を持参した方がよいということになり、医師から持ち込み許可を頂きました。

推測ですが、病院から入院食調理を受託している会社で、アニサキスアレルギー除去食の調理・コンタミ防止の運用マニュアル等が既に出来上がっていて、調理する方に研修等が行われている状況でないと、安請け合いはできないのだと思います。院内の管理栄養士さんと、実際に調理する会社が参考にできる、「具体的にどういう食材がだめで、どう注意すべきか」を明示したガイドラインがないと、その方々がアニサキス対応をしようにも、できないのではないかと思われます。日本アレルギー学会のような団体が、ガイドラインを作って下さることに期待します。

b. 入院時も持参弁当

アレルギーになってから、どこに外出するにも弁当持参なので、弁当作りは慣れたものです。 手術当日の朝、弁当を4つ作り保冷バックに。病室に入ったら、冷蔵庫で冷やし準備完了。術後、食事が取れるようになった後、看護師さんのお部屋の隣にある電子レンジで、家族に温めてもらい、自作弁当をおいしく頂きました。

4. 手術に使うお薬

入院前に、麻酔科の先生が私のアレルギーを詳しく聞き取りしてくれました。できるだけアレルギーの出にくい薬で、使う薬の種類も最小限にし、薬によるアナフィラキシーリスクを最小限にする方針で準備して頂きました。

a. 抗生剤

抗生剤にも複数アレルギーがあるため、乳腺は感染症を起こしにくい部位なので、抗生剤の事前投与なしという方針に。

b. 痛み止め

痛み止めも事前投与なし、術後に痛みが出た場合はアセトアミノフェノン(カロナール)を処方とういう方針に。

慢性蕁麻疹・血管性浮腫の人は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs、ロキソニンやアスピリン等)で薬剤性の咽頭浮腫・血管性浮腫を起こしやすいので使用しないということで、理解して下さっており安心でした。

手術後にカロナールを3回飲んだだけで、翌日には痛みもなくカロナールも必要なかったです。

c. 麻酔薬

全身麻酔薬は、レミマゾラム、レミフェンタニル、フェンタニル、エフェドリンを使い、アレルギー症状は出ませんでした。

麻酔科の先生から、手術前に心配りのある提案をして頂きました。今後、歯科治療や乳腺の組織診等で局所麻酔が必要な際、アレルギーやアナフィラキシーが起こると心配なので、全身麻酔下で局所麻酔薬をテストしてみませんか?と。「是非、お願いします!」ということになり、手術中に局所麻酔薬1%E キシロカインもテストして頂き、反応が出ないことを確認できました。

5. 結果

病理で良性の葉状腫瘍で確定、断端陰性。結果的には、マージンをそんなに取らずとも大丈夫な形で手術して頂き、左胸も無事温存。手術の跡も鉛筆の線より細く目立たないように綺麗に手術して頂き、女性として嬉しかったです。

6. 振り返っての感想

a. アレルギー診断の大切さ 

今振り返ると、腫瘍が大きくなったこと、ゾレアに反応が出たことは、不幸中の幸いだったと思います。この2つの偶然に加えて、診断をつけて下さる医師に出会わなかったら、いまだ特発性血管性浮腫として、原因不明の症状に悩まされ、高額のゾレアを毎月打ち続けていたと思います。左胸の手術も延期され、最悪の場合、大きく切除することになっていたかもしれません。

アレルギーの診断が遅れると、症状に苦しみ続けるだけでなく、他の病気の治療ができなくなってしまう場合がある、アレルギーを侮るなかれですね。乳腺外科の先生だけでなく、転院先のアレルギーの先生も、私の左胸の救世主です。

原因不明の慢性蕁麻疹や胃腸障害等で苦しんでいる患者さんの中に、私のようにアレルギーが関与している方もいるかもしれません。特に、アニサキスについては、未受診・未診断・誤診等の可能性も十分あると思います。困っている患者さんが早く診断・治療に結び付いてほしいと切に願います。

b. 入院食についてのつぶやき

長期入院だったり、具合が悪く弁当持参が無理、家族の助けがない場合は、入院中の食事はどうなるのだろう? 小児の場合は、給食等でいろいろ対応経験が蓄積されていると思われるが、成人の食物アレルギーの場合、入院食・介護食でどの位対応してもらえるのだろう?

入院施設のある病院で働かれている医療関係の方々へ、お願いがあります。アレルギー患者さんが、いざ入院した時に困らないよう、入院食のアレルギー対応の検討、新参者のアニサキスも含めて、宜しくお願いします! 美味しくなくても、映えなくても、毎日同じメニューでも、入院中に安全に栄養が取れれば十分です。

c. 先生方のアレルギー対応に感動

麻酔科の先生のお父様が局所麻酔薬にアレルギーをお持ちだとのことで、家族のように患者を心配し、手術で使用する薬でアレルギーやアナフィラキシーが起きないよう万全の準備をして下さって有難かったです。今回の手術のことだけでなく、今後のことまで考えて、局所麻酔をテストして下さったり、感動して涙が出そうでした。アレルギーに理解のある麻酔科と乳腺外科の先生にタッグを組んで頂き安心して手術が受けられました。

アレルギーで最初にかかった大学病院での対応で医療不信になっていた私ですが、もう一度病院や医師を信じてみようと思えた瞬間でした。医師との信頼関係がある中で、病気の治療ができるのは、100倍位よい気持ちでした。

 

 

 

 

 

 

事件簿 ① ギョーザコンタミ事件

症状・食生活とも安定期に入りつつある中に起きた、失敗やハプニングを書きたいと思います。 第一弾は、ギョーザコンタミ事件です(コンタミ=意図しない物質が混入)。

最初は豚アレルギー、中盤は豚と魚粉の関係、最後はアニサキスアレルギーの難しさについて書きます。

目次

 

1. 発端

冷凍餃子は食べられなくなったので、フードプロセッサーで自分で餃子を作ることにしました(「自分で作るよ」反骨精神)。

餃子の皮の原材料は大丈夫そうなので、皮は既製品を購入。私用の野菜の具と、家族用の豚入りの具、2種類を作りました。

皮に包み完成。フライパンで焼く際、家族用6個と私用3個を別々に2回焼くのは面倒だと思いました。「大きなフライパンだから端に置けば大丈夫だろう」と、一緒に調理しました。

2. 結果

食後1時間くらいで蕁麻疹、「やっぱり出ちゃった」。フライパンの中で、豚エキスが流れ出し、私の大切な野菜餃子にコンタミした模様。 翌日、野菜餃子だけで作ってみた所、症状は出ず、調理の仕方が問題だったと判明。

3. 学び

調理の際に面倒と思わずに、最後までコンタミしないよう初志貫徹が大事。

わざわざ家で作ったのに、最後の焼きの工程で手を抜き、失敗してしまいました。

そして、豚肉自体を食べていなくても、調理の仕方で症状が出てしまうということは、医師に言われた通り、外食は無理なんだと分かりました。お店で鍋を洗っていないかもしれないし、油も共用されているかもしれない。

原材料だけの問題ではなく、調理して口に入るまでの全ステップに気を付けた方がよいということ、野菜餃子たった3個に微量の豚エキスが浸透しただけで、私の場合はダメなんだとよく分かりました。迷いや曖昧さなく「外食禁止」と最初にきっぱり言って下さった医師に感謝しました。

4. 魚粉について

症状が出た豚肉に関連し、魚粉について書きたいと思います。 

日本では魚の養殖場以外にも、養豚場・養鶏場で魚粉が餌として使われていて、アニサキスアレルギーの人は反応する可能性があるかもという情報を目にしたことがあり、ちょっと調べてみました。

 

魚粉は、食用・飼料・肥料に使用されるのですが、世界的に需要急増・価格高騰が続いています。(エルニーニョでカタクチイワシ不漁、中国など新興国での需要増、有機農法での需要増、日本では円安も影響)。日本の水産養殖業も影響を受け、追加予算が組まれたり、魚粉を使わない飼料の開発も進められています。

 

ecodb.net

www.jimin.jp

養鶏・養豚の飼料としての需要も増加。牛のBSE・狂牛病問題の後、家畜のタンパク質源として牛の肉骨粉が敬遠され、魚粉が代替的に使われるようになってきたようです。

検索すると、日本の養鶏・養豚場ではかなり使われていることが分かりました。カツオ、イワシ、アジ、サバ等、アニサキス寄生率の高い魚の魚粉を使い、「うまみ」をアピールしている養鶏場もありました。「うまみ」文化は、卵本体まで浸透しているのかと、驚きました。ある養豚場では、白身魚の魚粉なら、豚肉に生臭さが出にくく肉に甘みが出るとのことで、そこをアピールポイントにしている所もありました。

国産牛の餌に魚粉は使われていないようです。

www.snowseed.co.jp

私の抗体検査では、豚、鶏、α-gal、卵、オボムコイドも陰性なのに、豚・鶏・卵には症状が出て、牛肉・生乳100%には症状が出ません。

餌の魚粉に含まれるアニサキスが影響しているのか、関係ない感作・アレルギーが成立しているのか、真相はよく分かりません。とにかく、症状が出る食物を除去し続けるしかないですよね。

魚介以外のフードチェーンで人工的に魚粉が餌として使われているのは、ちょっと心配だなあとは思います。魚粉の影響がないといいな、同胞のアニサキスアレルギーの患者さんの除去が、これ以上複雑にならないことを祈ります。

5. アニサキスアレルギーの難しさ

アニサキスアレルギーは、厳密には寄生虫に対するアレルギーで、狭義の食物アレルギーには当たらず、食物関連アレルギーなのです。生態系の中で、寄生虫が食べられて、それを食べた人が寄生虫に対して反応が出るという、ちょっと厄介なアレルギーなんです。

サバやイワシを食べてアレルギー症状が出て、サバやイワシの抗体検査は陰性、アニサキスの抗体検査は陽性ということもあります。

また、食べたサバにたまたまアニサキスが寄生していなければ、アニサキスアレルギーであっても症状は出ない。当たりはずれもあります。

私も、診断前にサバの塩焼きを試し症状は出ませんでした。でも、サバの水煮缶は20gで呼吸困難になりました。圧力調理の際、水煮というよりアニサキス煮の状態で、アニサキスのエキスがしっかり染み渡ったサバだったのでしょうか。恐ろしや。。。

そういう訳で、一概に除去の範囲を決めることが難しく、アナフィラキシーを起こした患者さんは、完全除去からスタートすることが多いようです。

小児の食物アレルギーでは、除去範囲は最小限に留めるのが基本になっています。それに対し、成人のアニサキスアレルギーの場合、未知の部分が多く、食品中に含まれる寄生虫や原因タンパク質の割合にばらつきがあるので、現時点では除去範囲を広く取らざるを得ない、ということだと思います。魚介類が食べられるというQOLのため、ロシアンルーレット的にアナフィラキシー・命をかけるのは、バランスが悪すぎますよね。

どう除去すべきかが定まっていなく、標準的な診療ガイドラインもないので、治療する医師によって、除去の指示が曖昧だったり、正確でなかったり大きなばらつきがあることも問題の1つです(例 生魚だけ除去でOK、味噌汁のダシはOK、養殖魚はOK等)。その結果、アレルギー症状を再発したり、どう除去すべきか不明な中、不安を抱えて毎日の食事を取らなければいけないケースも頻繁に起こっています。 

アニサキスアレルギーが、ちょっと厄介な理由が、一般の皆様にも伝わるといいなと思います。 そして、食物アレルギーの同胞の皆様、原材料だけでなく、コンタミにもお気をつけ下さい!